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この世の果てで 35

 04, 2010 00:00
瀬田は大学に家族だと電話を入れ拓海を呼び出ししてもらった。
だがその電話口に出たのは、聞き覚えの無い声の男だった。
「君は誰だ?」
「あなたこそ誰ですか?」

思いがけない反撃にあって瀬田は一瞬言葉を失った。
「尾崎には家族はいないはずですが?」
畳み掛けるようにその声の主が言った。
「君が新山君か?」

瀬田の言葉に新山が驚いて「どうして俺の名前を?」と尋ねた。
「拓海から君の事は聞いているよ」
この時点でお互いの電話の相手が拓海に関わる者だと理解した。

「拓海はどこだ?」横柄な態度にちょっと躊躇いながらも
「俺は午後から大学に来たんですが・・・いません、何処にも」
「午前中はいたのか?」
「はい他の奴等に聞いたら、昼飯時までは居たみたいで・・・・」

語尾を濁した新山に「どうした?」と瀬田が聞いた。
「あ・あの・・実は最近尾崎に馴れ馴れしい奴がいまして・・・
尾崎も避けてはいたんですが・・・そいつと一緒の所を見た奴がいて・・」

「新山君、君の携帯番号を教えてくれないか?」
瀬田にそう言われ、新山は番号とアドレスを教え一旦電話を切った。
そして直ぐさま届いたメールの添付画像を見て声を上げた。
「こ・・こいつ・・」

新山が携帯を握り締め驚いている所に今度は電話が鳴る。
「はい、あの・・こいつです、最近尾崎の周りをうろうろしてた奴」
違えばいいと思いながら画像を送った瀬田が肩を落とした。
「やはり・・そうか」
「はい、でもどうして?箱崎の写真を?」
まだ事態がよく把握できない新山が聞いた。

「箱崎?こいつは佐久間俊一と言って、拓海を逆恨みしている野郎だ」
「逆恨み?・・」
「ああ・・・今は説明している暇は無い、拓海を探す」
そう言った瀬田は電話を切ったが、新山はいつまでもその携帯を握り締めていた。


「さて携帯の電源は落ちているし・・・どうしたもんか・・」
瀬田の呟きに狭山が口角を上げた。
「他にもあるんでしょう?」と。
「勿論、へまはやらない」
そう言うと瀬田はパソコンの画面に向かって拓海の居場所を検索しだした。

毎朝出社前に瀬田は拓海に抱き付いていた。
最近は拓海も慣れてしまったのか、抵抗もなくハグをさせていた。
その時にそっとポケットに超小型発信機を忍ばせるのだ。
そして夜になると、脱いだ拓海のズボンのポケットから回収する。
勿論先に洗濯されてしまった時の為の予備もぬかりなかった。

「マメですねぇ」その話を聞いた狭山が呆れたような顔で言った。

瀬田はそのナビの情報を携帯に移しながら、「行くぞ」と腰を上げた。
瀬田と狭山は2台の車に別れ乗り込んだ。
運転している男たちは以前拓海のアパートに連れて行った2人の男だった。

先頭の車に乗り込んだ瀬田が支持を出す。
余裕ありげにしているが瀬田の内心は怒りと焦りで煮え滾っていた。
まさか大学の中に潜入しているとは瀬田も考えが及ばなかった。
そんな自分を責めながら、拓海の無事を祈っていた。


その頃、拓海は重い頭をもたげ周りを見回していた。
「目が覚めたみたいだな」
「あ・・・ここは・・箱崎さん?・・・」
覚醒しきれないのか拓海は自分が置かれている状況を理解出来ないでいた。

「あの、俺どうして?」
「君だけのうのうと幸せに暮らしているのが許せなくてね」
そう言われても拓海には全く意味が判らなかった。
「まだ判らない?」
「あの・・」
「鈍いな・・最近部屋が荒らされたりしなかった?」

「えっ?あれって・・・・」
そうだ、拓海は部屋を荒らした男の名前を聞いてた・・
「佐久間・・・俊一?」

「正解~」
男はそう言うと嬉しそうに笑った。
「それで、佐久間俊一が何者か知ってる?」
「・・・・誰?」

覚醒しきれない頭に次々と男は質問を投げかけて来た。
拓海は自分の部屋を荒らし、そして『絶対許さない』と電話を掛けてきたのが
この目の前にいる、さっきまで箱崎だと思っていた男だと言う事は判った。

「何故?どうして俺の部屋を荒らした?」
拓海はビリビリに破られた家族の写真を思い出すと急に腹が立ってきた。
「どうして?どうして俺の部屋を!」
「だから言っただろう?君だけ幸せになるのは許さないって」

「どうして?」拓海は疑問だらけの言葉を投げかけた。

「お前の父親が俺の父親を殺したからだ」
「!・・・」
拓海とてぬくぬくと幸せに育って来たわけではない、
人には言えない苦労もしてきた。
人一倍努力もしてきた、だから奨学金で大学にも通っている。
だから突然父親を亡くしたこの男の気持も判らなくは無かった。

「俺にどうしろって?」拓海がそんな言葉を吐くと
「どうしてもらおうかな?」そう言って佐久間が拓海の傍に近寄った。
その時、隣の部屋から待ちわびた男たちが出て来た。
「おい、俊一まだかよ?」
3人の若い男たちは、拓海を舐めるように見ながら佐久間に話しかけた。

突然4人に増えた相手に拓海は命の危険をも感じてしまった。
強張る拓海の前に一人の男がしゃがんで
「ふーん、なかなか綺麗な顔してんじゃん」
にやりとしながら言い捨てた。




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