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この世の果てで 31

 30, 2010 00:00
拓海は自分が今まで女性をどうにかしようとか
抱きたいとか思った事が無いのに気付いた・・・
『俺って淡白?おくて?』
だからと言って男が好きだとも思わなかった。
そんな事を考えているうちにいつの間にか眠ってしまったのだろう、
目覚ましのアラーム音で目が覚めた。

拓海は瀬田を起こさないように、そっとベッドから起き出し
朝食の支度を始めた。
使い勝手の悪かった広すぎるキッチンも今は慣れて最高の使い心地だった。
自分ひとりだと手抜きの朝食も瀬田が食べると思うと
苦にならないで作る事が出来る。

「おはよう」
拓海の好きな声が背後から聞こえた。
「おはようございます」
ちらっと振り向くだけで拓海は又手を動かし始めた。

「えっ!ちょ・ちょっと社長!」
瀬田が突然後ろから拓海を抱き締めてきたのだった。
拓海は驚いて悲鳴に近い声を上げた。
「驚いたか?いや~拓海がまるで新婚の奥さんみたいだったからさ」
揶揄しながら、瀬田がその手を解いて洗面所に消えた。

ドキドキ・・ドキドキ・・・
拓海は瀬田の姿が消えても、動悸が治まる事は無かった。
『びっくりした・・・』
拓海は瀬田が直ぐに肩を抱いたりくっついたりするのは
瀬田の癖のようなものだと思っていた。

あんな事されたら女性なんてイチコロだろうな・・
そう思った途端、瀬田が誰かに抱きつくことが凄く嫌だと思う自分がいた。
『俺・・なんか変』
どうしてそんな気持ちになるかも拓海は判らなかった。

まだ初恋の経験も無い拓海だった。

そんな日が数日続いたある日、大学で拓海は知らない顔の男から声を掛けられた。
「ねえ、尾崎君ってもう就職決まった?」
「ま、まあね一応・・」そう言葉を濁し返事をした。
『誰だっけ?』拓海はそう思ったが、自分の名前を知ってるのに
誰と聞くのも悪い気がして、聞けないでいたのだ。

「おーい、尾崎ぃ」
そんな拓海に同じゼミの新山が声を掛けてきた。
「あ、新山・・・」
拓海が返事を返した時にその見知らぬ学生は
「じゃ」そう言って拓海の横をすり抜けて行った。

「尾崎、あいつ誰?」
「それが・・知らないんだよなぁ」
「ふーん、気をつけろよ、知らない奴に着いて行くなよ」
「なんだそれ?女子供じゃあるまいし」
新山の言葉がおかしくて拓海は笑って済ませた。

だがその男はそれから毎日拓海に話しかけてくる。
そんな日が数日続いて、拓海はとうとう悪いと思いながら
「あの・・誰だっけ?同じゼミじゃないよね?」
「あ、バレちゃった?違うゼミだけど、俺尾崎君のファンでね」
「ファンって・・・」
どうして一般人の自分にそんな事を言うのか拓海には判らなかった。
「今度飲みに行かない?」
「俺バイト忙しいから無理」

拓海は何と無くこういうタイプとは近づきになりたくないな、と思った。
その時「おーい尾崎ー」とお決まりのように新山が声を掛けてきた。
その男は小さくチッと舌打ちをしたが、その声は拓海には聞こえなかった。

拓海の前に回るように新山がその男に
「君、誰?どこの学部?」と今まで拓海が聞きそびれていた事を聞いてくれた。
「あ、俺?経済の箱崎だけど」
悪びれる事なくその男は箱崎と名乗った。

「で、経済の奴が尾崎に何の用事?」
「別に学部なんて関係ないだろう?」
負けじと新山に箱崎が食い下がった。

「もういいよ、新山、行こう」
拓海は今にも喧嘩に発展しそうな二人を引き裂き
新山の腕を引いてその場から立ち去ろうとした。
そんな拓海に向かって、その箱崎は
「じゃ、尾崎君、俺は諦めないよ」
そう言って去って行った。

「何だぁあれ?何を諦めないのか?」
「い・いや・・飲みに行こうって誘われただけだよ」
「何だか怪しい奴だな・・・」
どうも新山も嫌な感じを受けているらしい。

そんな新山が尾崎に向き直って、改めて諭すように言った。
「本当に知らない奴には着いて行くなよ」
その顔があまりにも真剣だったから、この前のように
揶揄する事なく「判ってるよ」と答えた。

新山は拓海の唯一の友達と言っても過言ではなかった。
それほど拓海には友達と呼べる者が居なかった。
「お前と付き合いたいと思ってる奴多いんだから気をつけろよ」
新山にそう言われて拓海は驚いて顔を上げた。

「へっ?何それ・・・」
「・・・お前とどうにかなりたいと思ってる男が多いって事だよ」
ちょっと考えてから、新山は勢いをつけて一気にそう言った。
「はあ?余計判んない・・」

拓海は新山が一体何を言いたいのだろうと訳が判らなかった。
「だから・・・言わなくっちゃ判らないのか?」
出来たら言わないでおきたいと思った新山だったが
これから卒業に向かって尾崎を口説こうと思う輩が
大勢出てくるだろうと踏んだ新山は言いにくそうに言った。
「お前の事を性の対象とみている男が居るって事だよ」

「え・・っ」
新山の言葉に拓海は頭が真っ白になった。






ご覧頂きありがとうございます。

とうとう31話に突入してしまいました。

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COMMENT - 2

miki  2010, 09. 30 [Thu] 10:32

拓海君だんだんと気持ちが動いてますね~(^・^)でも、気をつけないと社長のセクハラはどんどんエスカレートしそう(笑)
さて、意外な事実を聞いた拓海君はこれからどうなるのでしょう。新山君も大変ですね。きっと何も分かってない拓海君を守ってくれてたのだと、勝手に想像してます(^^)

Edit | Reply | 

ぱせり  2010, 09. 30 [Thu] 10:44

mikiさま

こんにちは、東京は冷たい雨が降っています。

社長はじわじわと拓海を追い詰めて行ってます(笑)

そして自分を見る周りの目を知らされた拓海は
どう思い、どう行動するのか・・

今までに拓海の容姿に触れる事は無かったのですが
そろそろ、その顔を曝していかなくては・・・と思っています。

コメントありがとうございます。嬉しいです^^

Edit | Reply | 

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