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この世の果てで 29

 27, 2010 23:40
「片思いだ」と言い切る瀬田に
「その恋は成就しそうですか?」と揶揄しながら聞いたみた。
「判らん」
「ま、頑張って下さい」狭山はそう激励の言葉を掛けてから。

「ところで、佐久間の件はどうしましょう?」
今の一番の問題は瀬田の恋よりも佐久間の事だ。
「奴はどういうつもりで嫌がらせをしてるんだ?」

瀬田の問いに狭山が佐久間の調査結果を話し出した。
黙って最後まで聞いた瀬田が「ふざけるな!」と言葉を荒げた。

佐久間の父親が事故で亡くなってから佐久間の人生が変わった。
それは同情するし、仕方が無い。
だが、それ以降は佐久間の母親の責任だ。

当時夫婦仲はあまり宜しくはなかったらしい。
その時に多額の保険金が手に入り、母親の生活が一変してしまった。
ブランド物を買いあさり、男に溺れていったのだ。
そんな母親に育てられた佐久間がまともに育つ筈は無かった。

そして男に騙されるたびに佐久間に当たる。
いわば佐久間俊一もこの事故の二次的な被害者の一人であったのだ。
そんな生活をしていれば金が尽きるのもあっという間である。
酒に溺れながら「お父さんさえ生きていてくれれば」
それが口癖になっていた。

自分の乱れた生活を悔いる事なく、
今の落ちぶれた生活は全部あの事故のせいだと
言い続けた佐久間の母親は体を壊し、つい3ヶ月前に亡くなったそうだ。

「母親が亡くなったのがきっかけで、
佐久間の恨みの気持ちが再燃したのでしょう」
狭山の言葉に瀬田が渋い顔をして頷くが、
だからといって許される事ではないと思う。

拓海があのアパートを引き払った事で、
その恨みが収まってくれれば良いのだが・・
瀬田も狭山も一抹の不安を感じた。
ここで瀬田が手を出しても逆に佐久間を煽ってしまいそうで、
それも今は出来なかった。

母親の旧姓に戻っていたために、
拓海には佐久間という名前は心当たりが無かった。
「拓海には何も話すなよ」
「そうですね・・でも佐久間は新しい住まいは知らなくても、
尾崎君の通う大学は知ってる筈ですよ」
アパートを突き止めたという事は大学も知ってるだろう。

「それにしても拓海の居場所をよく探し当てたな」
それは簡単ではなかった筈だ、
そんな佐久間の執念がこれで終わるとは思えなかった。

瀬田は拓海を守る正当な理由が欲しかった。

「急いて押し倒すと嫌われますよ」
瀬田の心の中を覗いたかのような狭山の言葉に苦虫を噛み潰したような顔で
「判ってる・・・」と瀬田は頷いた。


その夜の事、拓海が話にくそうに声を掛けてきた。
「あの・・俺のベッドまだ届きませんか?」と。
「ああ、そういえば遅いなぁ、明日確認しておくよ」と
瀬田は惚けて拓海に答えた。

「何だ、俺と同じベッドではそんなにイヤか?」
「いえ・・ただ申し訳ないと思って。」
拓海は瀬田の体温が心地良いと思い出した自分に焦っていたのだった。

「何だ、拓海は一人でベッドの中で何かしたい事でもあるのか?」
揶揄するような瀬田の言葉を理解するのに数秒掛かった。
「えっ?・・あ・・・・」
その意味を理解した途端、拓海は真っ赤になり
「そ・それは社長だって・・・」
と言い掛け、そういえば瀬田だって男盛り・・
それなのに女の気配も無い事に気付いた。

自分は自慰するしかないけど、瀬田ならそんな必要もないだろう。
ルックスも良く、金も名誉もある・・女が放っておかないだろう。
そして此処に来てから自分が一度も自慰をしてない事にも気付いた。

「ん?俺がどうした?」
「い・いや・・・社長だって・・でも社長なら外に行けば・・」
「俺か?俺は今片思い中だからな・・そうなれるまで我慢してるよ」
嬉しそうな顔で片思いを告白する瀬田の顔を驚いて見上げた。

「片思い?社長が?」
拓海にはとても信じられない事だったが
「そうだ・・・だから抱ける日が来たら離さないさ」
「・・・・」拓海はその言葉を何故か複雑な気持ちで聞いていた。

「許して・・・って喘ぎながら請うまで離さないつもりだよ」
揶揄するように瀬田は拓海の目を見ながら言った。
「あはっ・・・そうですか、頑張って下さい」
拓海はそう言いながら、自分の体からひとつ梁が抜けたような気分になった。






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