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この世の果てで 28

 27, 2010 00:00
翌日の日曜日に瀬田と一緒に家具を買いに出掛けた。
だが瀬田の選ぼうとする家具は高価な物ばかりで
拓海は慌てて「そんな高い物は必要ないですよ・・」
と言うと「気にするな、備品だ」とかわされる。

備品と言われればそれ以上何も言い返す事は拓海には出来ない。
瀬田がベッドを選び、注文している。
その間に「ソファを選んでて」と言われ拓海は瀬田の傍を離れた。

その時に瀬田がベッドの注文をキャンセルした事など
拓海は全く気付かなかった。
ソファを選び、ローテーブルとワークディスクを選び
外で昼食を摂ってからマンションに戻った。

「ベッドは1週間ほど掛かるそうだ、それ以外のは明日の夕方に配達してもらう」
「はい、判りました」
ベッドが届くまで1週間・・・・拓海が戸惑っていると
「仕方ない・・それまでは俺のベッドで一緒に寝るしかないな」
「俺、リビングのソファでも・・」
「そんなんじゃ疲れが取れないだろう、俺のベッドの広さは知ってるだろう」
「はい・・すみません」

そしてそれから拓海のハウスキーパーとしての生活が始まった。
朝少し早めに起きて朝食を準備する。
最初は夕食だけの約束だったが、拓海の申し出で
朝食の準備もする事になったのだ。

大学に行く前に洗濯だけ済ませておけば、
後は帰宅してから間に合うものばかりだった。
バイト2つ掛け持ちしていた頃よりも
収入はいいし、体も楽だった。
こんなに良いバイトなんて今までの拓海の生活から考えたら何の文句も無かった。

『将来会社で一生懸命に働いて、この恩は返そう』
仕事だけでは割り切れない程良くしてもらっているのは事実だ。
拓海は恩を返す人間が二人に増えた事は苦では無かった。
逆にそれは拓海の生きる目標のような気がしていた。

拓海は夜になると瀬田の背中を流しそして瀬田のベッドの隅っこで眠る。
そんな日を過ごしていた。

そして瀬田の耳には『佐久間俊一』という男の詳細が伝えられた。
狭山からその報告を受けた瀬田は、机を背に外の景色を眺めながら
長い間考え込んでいた。

「狭山、被害者は死ぬまで被害者で、
加害者は死んでも加害者なのか?」
「そうですね・・・でも尾崎君を恨むのはお門違いかと?」

「そうだ、拓海には何の責任も無い」
そして拓海も被害者の一人であるんだ・・
だがこの事を拓海の耳に入れてしまったら、拓海はどうなる?
父を恨み人生を斜めに歩くような奴ではない。

きっと父親の代わりに償おうとするだろう。
だがそこまで拓海に責任は無いと瀬田は思っている。
もうあの事故云々の話では無かった、あの事故がなくても
『佐久間俊一』と言う男はまともな生き方をしてなかったかもしれない。

「俺は一番の被害者は拓海だと思ってる」

17の少年が金の為に体を開いた・・・
それも遊ぶ金欲しさではない、母親の入院費用の為だ。
あの事故はいつまで拓海を苦しめればいいのだろうか?

「社長、一度伺いたいと思っていましたが・・・」
「何だ?」
瀬田は椅子を軋ませ狭山に向き直った。

「社長の尾崎君に対する気持ちは・・・
同情ですか、憐憫ですか?それとも父性愛・・・
もしくは・・・・・」それ以上狭山が言葉を続ける事は無かったが

瀬田は狭山を正面から見据えて答えた
「恋だ」
「へっ!」狭山は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

「恋・・ですか?」
『愛してる』とか言うのならまだ判る、30も多少過ぎた男が
『恋』などと答えるとはまさか思いもしなかった。

「そうだ、恋だ・・・俺は5年前に初めて拓海を見た時から
拓海に恋している・・・」
世の中の酸いも甘いも知ってる男の台詞とは思えずに
狭山はとうとう我慢できなくなり、吹き出した。

「何がおかしい?」
「いや・・15・6の小娘じゃあるまいし・・・恋ですか」
「そうだ、まだ片思いだ」
随分態度のデカい片思いだと思いながらも、
拓海に簡単に手が出せない瀬田を可愛くも思ってしまう狭山だった。






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