**すみません、今回まで試練あります。
(今回は精神的なものです^^;)
『本当はお前が欲しかった』と一言口に出せば千夜は、救われるのかもしれない。そう思いながらも、その一言を速水は告げる事をしなかった。
はっきり言って1億という金額を、常人が5年で返済できるはずもない。
千夜の男として一番充実したこれからの5年を速水は自分に縛り付けた。
きっと千夜のことだ、自分の体を壊してでも返済の為に働き続けるだろう。
だから決まっていた就職先にも断りを入れ、速水の元においたのだ。
『貴方だからこんなに気持ちいい』そう言えばどうなるのだろう?
千夜は狂いそうな愉悦の中でそう思った。言ってしまえば楽になるのだろうか?
媚を売っているように思われないだろうか?
「あぁっはっ……」体に掛かる振動が千夜の思考を失くしてしまいそうだ。
マーブルのように攪拌されながら、2つの心が混ざり合ってしまう。
一度放出したにも関わらず、頭を擡げてくる己が浅ましくもあり、哀れでもあった。
滴り落ちた体液で速水が動くたびにグチュグチュと卑猥な音が鳴る。
「恥ずかしい……」千夜のその言葉の意味を知っている速水は口角を上げた。
「中が熱くて蕩けているぞ」今まで速水がそんな言葉を口にする事は無かったのに……
辱めを受けているようで、その言葉に体中が更なる熱に冒される。
「あぁ……あぁぁ……イキソウ」
千夜の言葉を受け速水は、千夜の体を深く折りたたんだ。
「やぁっ!あぁっ!」その体勢は千夜の全てを晒すように再奥を目指す。
垂直に振り下ろされる刃(やいば)に千夜は再び白濁を飛ばした。
1本の電話が鳴る。
朦朧とする意識の中その携帯を開いた、速水からの電話であった事に驚いた。
慌てて電話に出ながら周りを見回すと、昨夜泊まったホテルらしかった。
そして時間も、もう昼近かった。
何という失態だ、と自分を叱りながら「すみません!」と電話に出ると
速水は想像以上に優しい声で「体は大丈夫か?」と聞いてきた。
千夜は一瞬で昨夜の事を思い出し、顔から火が出るような気分だった。
昨夜、剛というヤクザみたいな男と、シロという水商売風の男に抱かれた事を思い出すと同時に、その後に縋りつくように速水に抱かれた事まで思い出した。
「大丈夫です」と言いながらベッドを下りた途端に腰から崩れ落ちた。
足腰に力が入らない以上に、体の節々も痛む。
昨晩どれだけ自分が乱れたのか想像がつき恐ろしくもあった。
千夜の声の反応から読み取った速水が「今日はゆっくりしておけ」と言って電話を切った。
「はぁっ」深くため息を吐き、もう一度ベッドに戻り腰掛けた。
(情けない……)剣道で鍛えた体は、ベッドでは何の役にも立たない事を思いしらされる。
そして、何も身に着けていない筈の自分が、下着もパジャマも着ている事に気付き、誰もいない部屋で、千夜はひとり赤面してしまった。
あの時点で速水しかこの部屋にはいなかった筈だ……
では自分の体を綺麗にし、パジャマを着せたのは速水?
「はぁ―っ」千夜の口からは、さっきよりも深いため息が零れた。
千夜は、ぼうっとする頭で速水の今日のスケジュールを思い起こす。
午前は病院で、午後3時から大学での講義が1本入っていたはずだった。
今日の予定はそれだけだ、手術もない……
千夜はこれなら自分が無理して行かなくても大丈夫だと、自分を甘やかした。
「あっ」講義の資料の場所が判っているだろうか?
運転は自分でするのだろうか?千夜はそんな事を考え出したら、無性に気になってしまい落ち着かなくなった。
自分の仕事は、多忙な速水のスケジュールを調整し、予定を組み込む事なのだ。
そして外出する時は運転もし、鞄持ちもする。
無理なくそして潤滑に事が運ぶように、未熟な自分も勉強してきた。
「くそっ」千夜は気だるい体に鞭打ちシャワールームに向かった。
熱いシャワーで煩悩を全て流し切り、昨夜着てきたスーツに着替えた。
電車を使い院長室に着いたのが、午後1時30分だった。
丁度午前の診察も食事も終わり、寛いでいる時間であった。
ノックして院長室に入っても誰も居なかった。
そして院長室の奥にある速水の仮眠室兼プライベートルームから小声が聞こえた。
客が来て、速水が奥の部屋に通す事はまず無い。
少々不審に思った千夜がドアに近づくと、中の声がはっきり聞こえてきた。
「あぁぁっ……もっと……あぁっ爽輔っ……」
男の強請るような淫靡な声に千夜の動きが止まった。
心臓が早鐘を打ち出す、ドクドクとその音が自分の耳に警鐘のように響いてきた。
「誰だ?」中から速水の声がする。
「……香坂です」
「入れ」中で何が起きていようとも速水の命令は絶対だ。
「失礼します」千夜はドアノブに手を掛けゆっくり回した。
扉を開け中に入った千夜は、一瞬動きを止めるが、部屋の中を見ないように、速水に向けて言葉を発した。
「遅くなって申し訳御座いません、午後の講義の資料の確認に来ました。」
「そうか、ではここで待っておけ」
速水は自分に跨り座る男の肩を掴むように腰を振りながら答えた。
「畏まりました。」
千夜は少し離れた場所で、千夜を振り返ろうとしない白衣の背中を黙って見詰めていた。
「あぁぁ……ああああっ……」
速水が腰を突き上げる度に嬌声を洩らす男は、この病院の内科医の手塚忍だった。
まさか速水とこういう関係にあるとは思ってもいなかった。
白衣に隠され目にする事は出来ないが、あの下で繋がっている事は見なくても判る。
手塚は20代後半のまだ若い、そして線が細くまだ少年のような体躯をした医師だった。
外来患者の評判も良く、院内でも人気者の手塚がまさか、速水の上でこんな艶かしく腰を動かしている、などとは誰も想像つかないだろう。
ひと際手塚の声に艶が増し、忙しない喘ぎが耳に届いてくる。
それは手塚の絶頂が近い事を知らしめていた……
自分でもあんな声を出しているのかと思うと、耳を塞ぎたくもなる。
「ああああっあっあっああああぁぁ―――っ」
手塚のびくびくっと特有の動きの後「うっ」と小さく呻いた速水の声も聞こえる。
暫く速水の胸の凭れるようにしていた手塚の体が離れる。
ごそごそっと事後の処理をする後姿の妖艶さに、手塚の心が少し見えたような気がする。
手塚は2人分のゴムを結びそれをテッシュで包み白衣のポケットに仕舞う。
ゴム……?
その薄いゴムの隔たりに千夜は内心安堵の吐息を洩らした。
そういえば昨夜、剛もシロもゴムを装着していた。速水は千夜にゴムは使わない。
あんなゴム1枚分でも、速水の近くにいる事を喜んでいる自分に呆れてしまう。
身支度を済ませ部屋を出る手塚が、一瞬険しい目で千夜を睨んだような気がした。
それはそうだ……個人が愉しんでいる所に邪魔したわけだし、手塚にしてみれば弱みを握られたかのように、感じたのかもしれない。
「何をぼっとしている?お前も欲しくなったか?」速水の皮肉のような言葉を聞き千夜は思った。
もし、ここで俺が欲しいと言えばこの男、自分にもゴムを使うのだろうか?
シャワールームは設備されているこの部屋で……
だが千夜は怖かった……自分も同じように扱われるかもしれない。
いや、考えてみれば自分は火遊び以下なのだ。
そう思うと少し浮上した心が再び沈んでしまう。
「いえ、そろそろお出かけの準備をして下さい、院長」
千夜は頭と体を速水の秘書に切り替えそう言葉を掛けた。
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まーーたく関係ないですが、24日誕生日ですヽ(゚∀゚)ノ
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3度目まで続けていられるのかな?
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