2ntブログ

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

罪よりも深く愛して 7

 23, 2011 00:00
「……剛もっと」浴室の扉が完全に閉まっていないのか、シロの声が微かに聞こえてくる。
「ああぁぁん……剛イイッ!あぁもっと奥に……」
「シロ……今夜は普段より激しいな」剛の声も甘く響いている。
「だ・だってぇ……あぁっ!剛気持ちイイよぉ……」
恋人同士のSexを耳にして千夜は、何故か羨ましく思う気持ちがあった。
感情のままにシロが求めているのは、対等だからだ。

自分は速水にとって性具でしかないのだ。
今夜みたいな事は今後もあるかもしれない、もっと酷い扱いを受けるかもしれない。
それでも自分は速水の前で脚を開かねばならない。

シャワーの音と共に肉と肉がぶつかり合う音が聞こえる。
だが千夜は知らない……
浴室の床に流れる、色の着いた水が排水溝に吸い込まれて行っている事を。

そして射精する事も無くただ疲労だけを溜めた千夜は、いつの間にか深い眠りに落ちて行った。
暫くしてバスルームから出てきた二人の物音に、速水は眉間に皺を寄せた。
「あっ」そんな速水の様子を見て、小さな声を洩らしシロが肩を竦める。
そして小声で速水に念を押す。
「速水さん、約束ですからね、2月の舞台のチケット200枚お願いしますよ」
「判っている、用意が出来たら連絡しろ」
「じゃ、俺ら帰りますから……」剛はそう言いながら、毛布を掛けられ眠る千夜に視線を走らせた。

「ああ、またそのうち声を掛けるかもしれん」速水の言葉に剛は肩を竦める。
「いや、多分この子で声が掛かる事は無いでしょう」
「どうしてそんな事が判る?」速水はそう言って剛を睨む。
「だって速水さん、この子に惚れているでしょう?」
口角を上げニヒルな顔で剛はそう言うと、「じゃ2月宜しく~」
と軽口を叩いてシロと一緒に部屋を出て行った

千夜が目を覚ました時には、シロも剛も部屋には居なくて、珍しく自分の横で寝息を立てている速水がいた。
千夜が与えられた部屋に速水が泊まる事は今まで一度も無かった。
そして千夜が速水の部屋を訪れた事も勿論ない……
だが今夜速水は、家には帰らず千夜の隣で眠っていた。

誰かが体を拭いてくれたのだろうか?
汗と自分の零したカウパー液で汚れた体は、さらさらとして不快感はない。
少し頭を擡げて速水の顔を……唇を見ていた。
それは今夜初めて触れた唇だった。

――――ずくんと千夜の体と心が疼いた。

刺激だけを与えられ、後ろに2人の男の性器を受け入れたものの、まだ射精していない体は少しの刺激で疼いてしまう。
意識を逸らそうとしても、逆に意識がそこに集まって来るような気がする。
速水によって作り変えられた体を持て余し、眠る男が憎らしくも思えてくる。

遅くまでバイトをしていると、病院の面会時間には到底間に合わなかった。
だけど千里が欲しがる漫画や本を持って行ってやりたくて、いつも内緒で部屋に忍び込んでいた。
見舞いに行くと、時々部屋の扉が開いている事があった。
気付かれないようにそっと廊下から見ていると、いつも千里の枕元に立っていたのは、この速水だった。
体に着けられた管や機械の数値を確認したり、脈をとったりしている。
そしてその一連の動作が終わると必ず、千里の頭に手を置くように何かを口にしていた。
最初はそれが判らなかったが、何度かそういう場面に出くわして、その唇の動きが分かった。
「頑張れよ」声は千夜まで届かないものだったが、唇の動きはそう語っていた。

『頑張れよ……』まるで自分にも言われているような気がして、嬉しかった。
懸命に千里の治療をしてくれる速水に感謝し、そして千里に向けられた言葉を自分も貰い頑張って来られた。

3ヶ月前に速水から融資の話とその条件を聞かされた時……
もしこれが速水でなければ自分は即答で断っていただろうと思う。
角膜を売ってでも、腎臓を売ってでも1つあれば何とかなる物なら喜んで手放しただろう。

千夜はその唇にそっと唇を押し当てた。
触れるか触れないかの感触に、ドキッとした瞬間後頭部に速水の手が回された。
「あっ!」
眠っていると思っていた……
キスしていたのを知られるくらいなら、まだ自慰の方がマシだと千夜の頭はそんな事を考えていた。

速水の手に引き寄せられ、厚みのある舌が千夜の唇を割って入ってきた。
「んん……」
官能のツボがここにもあるのだろうか?
千夜は速水の舌の動きに、体中から力が抜けてしまうようだったが、違う意識はひとつ所に集まり始める。

「千夜、堕ちて楽になれ」速水の言葉に千夜は心の中で抗った
(堕ちたら、違う地獄が待っているのに……)と。

繋がる度に「挿れていいか?」と聞いていた速水が、今夜は確認もなく千夜の体を押し開き繋がってきた。
「ああぁ――――っ」
ぎゅっと後孔が締まり速水を締め付けながらも、千夜はその一撃で高みに追いやられた。
「あぁぁっ」

呻きに近い喘ぎ声が千夜の口から漏れて止まらない。
堕ちる場所が判らなくて、どんどん昇りつめ恐怖すらも覚えた頃、速水の手が伸びてくるのが見えた。
「駄目だっ!やめっ……」
今その手を添えられたら自分は狂ってしまうかもしれない。

「千夜……」千夜は手が届くより前に、その掠れた声を聞いた。
「あぁぁ……っ」昇りつめたと思った先にも、まだ快感は残っていたらしい。
地獄の釜よりも熱いのではないだろう、と思わせる灼熱が千夜の全てを支配した。
(――――堕ちる)
何処までも堕ちる……千夜は縋る想いで速水の体にしがみ付いた。
そして速水の背中に痕が残るほど爪を立てた。

長い放出の間その力が緩む事はなかった。
今まで経験したことのない快感に、千夜はぼろぼろ涙を零しながら「辛い……」とだけ言葉を発した。



日本ブログ村とFC2のランキングに参加しています。
ポチっと押して下されば嬉しいです(*^_^*)
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村




関連記事

COMMENT - 4

L  2011, 06. 23 [Thu] 10:22

命令形の言葉の端々に見える千夜を求める速水の心

千里のためにその命令に従う形でありながらも、速水を恋う千夜の心

千夜に「ひどい」ことをしていながら千夜に対して思いやりを見せる、普段は円満な恋人同士らしいシロと剛
その二人を、体でだけでなくその精神の輝きで惹きつけてゆく千夜
 
だいじょうぶ、ここはやっぱりkikyouさまの世界です(^・^)
どこかに血の通っている優しいハートが見え隠れしてます。

Edit | Reply | 

けいったん  2011, 06. 23 [Thu] 11:04

医師として 千里の命を守ってくれる 速水を 見知っているから!
だから 千夜は、速水を 嫌いになれないのでしょ?
どんなに 酷いことをされても 悲しくても...

kiyouさま”十八番(おはこ)”の 刹那さ100%~~♪
うぅ・・・萌ぇ――(〃д〃)――!!...byebye☆

Edit | Reply | 

kikyou  2011, 06. 26 [Sun] 20:26

Lさま

こんばんは!

千夜と速水の心を理解して下さってありがとうございます。
何か読み返すと、なかなか先走ってしまってて
きちんと表現出来てないような気もするんですが……

でも、私の世界と言ってもらえて、凄く嬉しいです。

Lさんにそう言って頂けると、自信がつきます(゚∀゚)
いつも読んで下さってありがとうございます!


Edit | Reply | 

kikyou  2011, 06. 26 [Sun] 20:31

けいったんさま

こんばんは。

過去に垣間見た速水の姿は感謝こそすれど、恨む事は出来ない。
酷い事をされているようで、その存在はどんどんと千夜の心の中で大きくなってきています。

素直になりたくても、なれない速水……

エヘヘ(*゚ー゚*)ポッ萌えて下さってありがとうございます。

コメントありがとうございました!

Edit | Reply | 

WHAT'S NEW?