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俺、武藤駿平 23

 02, 2011 01:05

「降りるよ」
茫然としていた那月は駿平に手を引かれて、初めて最寄りの駅に着いた事に気づいた。
ホームに降りてもまだ何が起こっているのか、どうしてここに俊平がいるのか理解出来ないでいた。
駿平に手を繋がれたまま改札を抜ける。
何人かの若い女性が振り向き、驚いた顔をしているのを見て未だに手を繋いだままだと気づき、駿平の手を解こうとした。

「駄目だよ、もう離すつもりないから」
「ひ・人が見ている」
「構わないよ、人の目なんか気にしていたら……大事な物を失くしてしまう」

駿平と那月はそのまま、マンションへの道を黙って歩いた。
マンションの入り口まで来て、初めて駿平が那月の手を離す。
「一応調べた……」
「え……?」
「まだ那月さん独りで住んでいるって事を。でも通って来るような人がいるなら、俺はこれ以上足を進める訳にはいかないから」

那月は駿平の顔をまだまともには見ていなかった。
ここまでは3年ぶりの、手の暖かさだけを感じていただけだ。
那月は離された駿平の手を、自分から繋ぎマンションの中に入って行った。
駿平も引かれるまま付いて来る。
あの当時と違って、那月の収入も遥かに良くなった。だから一人で家賃を払っていく事も苦では無かった。
だが、引っ越さなかった一番の理由は、いつか駿平が訪ねて来るかもしれないという甘い期待があったからだった。
その期待が今は現実となり、自分のすぐ近くに俊平がいる。

那月は黙って部屋の鍵を開け、駿平も黙って那月の後に続く。
那月は靴を脱いで上がったが、駿平は三和土に立ったままの状態だった。
「俺、ただいまって言っていいの?」
さっきまでの強引さは無く、少し遠慮がちな声が聞こえた。

那月は駿平に背を向けたまま俯いて、返事をしようとはしなかった。
沈黙を破ったのは、那月の言葉ではなく小さな嗚咽だった。
駿平は那月の肩を抱くように自分の方に向かせた。
涙がはらはらと零れ堕ち、那月の頬を濡らしていた。
「それって、嬉し涙だと思っていい?」
3年の月日は、駿平を大人の男に変えたようだったが、那月はずっと同じ所で立ち止まっていた。
引導を渡したのは自分だ、だから恨み言の一つも言えるはずもなく、ただ涙でその気持ちを伝えてしまう。

「いい?勘違いだって後で言わないでよ?」
そう言って駿平は自分の胸に那月をそっと抱き寄せた。
迷子になった子供がやっと暖かい胸を見つけたように、那月は駿平の胸に縋り付いてしまう。
まだ靴も脱いでいない駿平は、待ちきれないように那月の顔を上げさせ、その唇に自分の唇を強く重ねた。

啄ばむキスは通り越して激しく吸い付く。
少しだけ抵抗を見せた那月も、駿平の思いに応えるかのように全てを預け絡まる唇や、差し込まれる舌を受け入れた。
何度も角度を変えた唇は、名残惜しげに銀糸を引いて離された。

「お帰り……」潤んだ瞳の那月が囁いた。
「ただいま」そう言う駿平の顔を3年ぶりに、じっと見つめる。
「入っていい?」駿平の言葉に那月はまだ二人が玄関にいる事を、そして駿平が靴も脱いでいない事を知った。

「ここに戻るつもりが無いのなら、このまま帰って……」
「俺を受け入れるつもりが無いのなら、今直ぐに追い返して……」
お互いの言葉に口元を緩め、もう一度啄ばむキスでその問いに答えた。


それから別々にシャワーを浴びた二人の躰は、那月のベッドの上にあった。
聞きたい事は沢山あったけど、今は躰で繋がり駿平を確認したかった。
那月はただされるがまま解され、繋がる瞬間を待っていた。
そんな中駿平が低く呟いた。
「他の誰かが那月さんの此処に触れたかと思うと、何か……苦しい」
「……僕だけだから……」
那月にとってその告白はとても恥ずかしいもので、顔を赤くしながら答えた。

「え……?」一瞬言葉の意味を呑み込めずに、駿平は聞き返した。
「……駿平こそ」那月は恥かしさを隠すように、駿平を責めてみた。
「お・俺?俺は那月さん以外抱くつもりは無いから」
躊躇いも何もなく言い放つ俊平の言葉に、嘘も誤魔化しも感じなかった。
「だって、駿平……その若さで……」
「まぁ結構つらかったけどね、マジこのまま枯れちゃうかと思ったよ」
本当は例え駿平が何十人抱いていても構わなかった。
自分の所に戻って来てくれただけでもいい、そう那月は思う事が出来る自分に驚いていた。

「だから……那月さん、覚悟してよ」
そう言い指を引き抜いた駿平の濡れた切っ先が、那月の後孔に当てられた。
「あぁ……」
那月は、その熱さだけで達ってしまいそうな気分だった。
「そんな色っぽい顔しないで、我慢できなくなるから」
そう言いながら、駿平が腰をぐいっと進めて来た。

「うっ……」心が渇望していても、流石に久しぶりに受け入れる塊に、小さな呻きが零れてしまう。
「痛い?」
覗き込む駿平に泣き笑いの顔を見せながら、ゆっくりと首を横に振った。
「続けるよ」駿平は優しく声を掛けた。
「うん、駿平が欲しい。ずっとずっと駿平だけが欲しかった。寂しかった……」
「那月さん、それ反則」
駿平はそう言うと、ゆっくりと、だが止まる事なく起立した己を沈めて行った。


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COMMENT - 4

此花咲耶  2011, 06. 02 [Thu] 10:32

kikyouさま
二人のこの一途さに涙しました。(ノ_・。) きゅんきゅん♪です。
きっと、幸せになってくれると思いながらも、現れる他の登場人物に胸が騒ぎました。
あるべきところに戻って来た二人の姿に、感動しました。わたしもいつか、こんな風に誰かの胸を打つ作品を書きたいです。
これからも、楽しみにしています。

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梨沙  2011, 06. 02 [Thu] 10:34

(*^^*)ポッ

お互いに元の鞘に納まったようで何よりです(*^.^*)
でも 駿平の3年間が気になりますね( * ^)oo(^ *) クスクス 何してたのかな!? まっ 今は2人の愛を確かめ合ってねσ( ^ー゚)うっふん♪

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-  2011, 06. 02 [Thu] 21:13

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k.k  2011, 06. 03 [Fri] 00:54

こんばんは

キュン。甘い御話を いつも有難うございます。
ほんと 糧です。

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