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泥より出でて泥に染まらず 5

 29, 2011 00:00
「こんな事をして……1億もの金を要求していて……」
千尋は静かだが、厳しい口調でそう言った。
「ふふふ、二代目が来る頃は状況が変わっているさ」
自信ありげに言う駒田の、その根拠が千尋には判りかねた。

(あと30分……)

駒田は、まるで目の前の千尋を酒のつまみにするように飲んでいる。
その口元は嫌らしく薄ら笑いを浮かべていた。

千尋は、両手を頭上と捕えられているからなのだろうか、躰が次第に熱くなって来た事に気づいていた。
最初はこの体勢のせいかと思っていたが、その熱は躰全体に回ってくる。
そんな千尋の顔色を見た駒田が「そろそろだな」と言い放ちぐいっと杯の酒を飲み干した。

駒田の横で酌をしていた男が、駒田に何か耳打ちされ千尋に近づいた。
指の腹で俯いた顔を上げさせられると、その指の感触に千尋の皮膚がざわついた。
(え……っ?)
「どら、どのくらい敏感になったかな?」
揶揄するように千尋の顔を覗き込んだと思ったら、その指は千尋の首を撫でつつーっと鳩尾まで下りた。

「あっ……」
指がなぞった道筋が異常に火照ってしまい、千尋は男の顔を睨むように見た。
「お兄さん、随分と目が潤んでいるねぇ」
ここまでくれば、素人の千尋にも自分が何か薬を使われた事に気づく。
「あ……っ」コンビニのサンドイッチと一緒に出されたスープだ。
千尋は肌寒さのあまりに、口を付けてしまった事を今更ながらに後悔した。

「全く警戒心の薄い奴だな……今朝といい」
千尋の傍にいる男が、本心から呆れたようにそんな事を言った。
「……どうしてこんな?」
「あんな恥掻かされて、1億ぽっちで済まされると思う方がおかしい」
千尋はこの駒田という男がどんな恥を掻かされたかは知らないが、光輝がそんなあくどい事をするとは考えられなかった。
そしてこの駒田という男が、千尋に薬を使って何をさせようとしているのかも分からない。

「それにしても女みたいな綺麗な肌をしているなぁ……」
千尋の傍に立つ男が、間近で千尋の体を見て溜め息混じりに呟いていた。
「組長、ちょっと弄ってもいいですか?」
「勿論、元よりそのつもりだ」
駒田の承諾を得た男が、にやっと口元を緩め千尋の薄い胸に手の平を合わせた。

「やだ……やめろっ」
千尋は躰を捩って、その手から逃れようとするが、ただぐるぐる回るだけで反って不安定になるだけだった。
「無駄だよ」そう言うと男は楽しそうに、千尋の胸を弄った。
「やだっ!触るなっ!」
男が触れる度に、熱を帯びる面積が広くなり千尋は何度も唇を噛んで堪えた。
体中に広がりつつある熱を……知られてはならないと必死に抗うが、それはもう千尋の意思でどうにか出来る範囲を超えていた。

「おい、坂本!」
「へい……」
坂本と呼ばれた男は、今千尋の胸に手を這わせにやにやと笑っている男だ。
「ちょっと、こっちに背中を向けさせろ」
坂本は駒田の真面目な口調を訝しく思いながら、千尋の背を見せるように向きを変えた。

「……なんだ?」駒田の声が少し掠れている意味を千尋は知っている。
ぎゅっと目を瞑り、熱を発散させようと呼吸を早めた。
そして千尋は、すくっと駒田が立ち上がる気配を背中で感じた。
近くまで来て、千尋の体を舐めるように見詰めている。
千尋はその様子を痛いほど肌で感じた。

「これは、凄い拾い物だ。おいもう少し薬を飲ませろ」
「いやだっ、止めろ」
だが、千尋のそんな抵抗など赤子の手を捻るよりも簡単に防げる。
男二人に鼻を抓まれ小さな粒を放り込まれれば、呑み込んでしまうのも時間の問題だ。
ご丁寧に水まで含まされた。

危ない物が自分の喉を滑り落ちる感覚に、千尋はなす術もなかったのだ。
「ふふふ……ははは……1億で渡すには惜しい」
「ふざけるな……あっ!」
言っている傍から坂本が、千尋の尖りをきゅっと摘まんだ。
予想しなかった動きと、異常に敏感になっている皮膚のせいで、小さな悲鳴が漏れた。
「おお、なかなかいい声で啼くな」千尋の反応に駒田が下衆な笑顔を見せた。

「組長、そろそろお時間です」
入口に控えていた男がそう声を掛けた。
千尋はその言葉に詰めていた息を吐いた。
「そうか、出るか?」
「え……っ?」
千尋はここに光輝が迎えに来るものと思っていた。
「ふふふ、残念だな。お前の男と会うのは組事務所だ。ああ二代目が来る頃には、お前は善がって誰彼にでも脚を開いているんだろうがな?」

駒田の恨みは金だけでは無いのだ、女を奪われ恥を掻かされた。
どうしても同じ思いを二代目に味あわせてやりたいと思っていた。
そして二代目の相手が男だと同業者に広く知れ渡れば、いい笑い者だとさえ考えていた。
だが、千尋の背中を見て欲を掻いた。

「おい、坂本ギリギリの所で止めておけよ。楽しみは後だ」
そう坂本に言いつけて、部屋に5人程残して駒田は出て行った。
「はい、いってらっしゃい」駒田の背中に深々と頭を下げる様子を千尋はぼんやりと眺めていた。

ずくずくと、躰の奥から熱いマグマが噴き出すようだった。
(光輝……)
顔を思い浮かべようと閉じた瞼からぽろっと涙が零れ足元の畳を濡らした。


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COMMENT - 2

-  2012, 04. 16 [Mon] 17:08

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こりん  2013, 04. 14 [Sun] 19:18

この先を読む場所がありましたら・・・しりたいです!!

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