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俺、武藤駿平 10

 11, 2011 00:15
「ねぇ康二、本当にこんな事をして大丈夫?」
一樹は手に財布の入った茶色い小箱を持っていた。
「いいんだよ、あいつ等は誰かが背中を押してやらないと素直になれないからな」
「あいつ等じゃなくて、那月さんはでしょう?」
「まあな……色々あったし、でも駿平と2年一緒にいる間に随分と明るくなった」
「もう保護者卒業?」

高校の時に、那月が付き合っていたのは康二のクラスメイトの、東山という男だった。
女にも男にも手の早い事を除けば、悪い奴ではなかったが、見た目の良さで相手に不自由しなかった分、だらしの無い面を持っていた。
いわゆるプレイボーイと呼ばれる男だったのだ。

その東山が珍しく自分から那月を誘った。
純情な那月が東山の手練手管に落ちるのは時間の問題だった。
だが、なかなか肉体関係を許そうとしない那月に、東山が痺れを切らしそれを煽った仲間と共に那月を襲った。

康二と友達が駆け付けた体育倉庫で、犯される寸前の那月を見つけ助けたのが、今のように親しくなる切欠でもあった。
だがそれ以来那月は誰かを好きになっても、心を開かなくなってしまった。
「本当は好きだったんじゃないの?」
「ああ見えても結構男気のある奴だからな、那月は」

「でも、自分の事になると臆病だ。駿平の見え見えな態度も、ヴェールで覆われて見えてないんだから……」
「うん、駿平君は可愛いよね」
「一樹浮気するなよ」
もう二人の話は終わりだと言うように康二が、一樹の背をシーツに縫い止めた。



その頃、駿平と那月はそれぞれシャワーを浴びて、那月のベッドの上にいた。
「駿平君、女の人を抱いた事ある?」
「……あるよ」少し躊躇った後の返事に、那月の顔が曇る。
「じゃ判るよね?基本は同じだよ、傷つけないように大事に抱いてあげれば大丈夫。」

「これは?」駿平が手にしたのは、さっき間違って袋に入っていたローションだった。
「え……っと、男は女の人みたいに……濡れないから、それで滑りを良くして……」
言葉でこういう事を教える事がこんなにも、恥ずかしい事だとは那月も思わなかった。

「でも……駿平君、女の人を抱けるのなら、覚えない方がいいと思うよ」
駿平に興味本位で、こっちの世界に入って欲しくは無かった。
「どうして?俺が男を好きになったら駄目なの?」
駿平の真剣な眼差しを受け止めて、那月は自分でパジャマのボタンに手を掛けた。

「待って、俺に脱がさせて」
那月の指をそっとどかして、駿平はボタンを一つずつ外し始めた。
そして全部外すと、肩を撫でるように上着を脱がしていく。
露わになった那月の肩を唇でなぞりながら、首筋へと滑って来る。
そして駿平が顎のラインに唇を這わせた後、那月の唇に重ねようとした。

ふっと顔を横に逸らされる。
駿平はそんな那月の頬に触れ、正面を向かせた。
真っ直ぐ下から見上げる那月の目を見ながら、もう一度その唇に触れようとする。
「男の抱き方は教えるけど、キスの仕方は教えるつもりは……無い」
「何それ……?」那月の強い口調に駿平も驚いて、強い口調で返してしまった。

「……キスは好きな人としなさい、って言っているだけだよ」

那月の言葉に一瞬強張った駿平が、もう一度顔を近づけて来た。
今度は有無を言わせず、那月の唇に絡み付く。
「いや……っ」
那月の小さな悲鳴が、駿平の口腔に呑み込まれて行った。
抗おうとする体も、那月よりも一回り大きい駿平に押さえ付けられれば、ビクともしなかった。

「あ……」閉じた唇をこじ開けるように、駿平の舌が差し込まれた。
(慣れている……)
だが那月がそう感じたのは、ここまでだった。
急に駿平の動きが、ぎこちないものに変わった。
那月はそれが少し嬉しくて、駿平の舌に自分から絡ませていった。

静かな部屋にキスの音だけが響いている。
銀の糸をひいて名残り惜し気に駿平の唇が離された。
だが余韻の残る那月の耳は「ごめん」という駿平の言葉で現実に戻された。
「ん……」ツンと目頭が熱くなって、上手に返事が出来なくなって那月は顔を背けた。

「ごめん、那月さん……」
「……」謝らなくてもいい、とすら言葉に出せなくて那月は駿平の目を見る事が出来なかった。

「俺、振られるのが怖いから、ちゃんと言わなかった。ごめん俺卑怯だな」
那月は、駿平の言っている意味が呑み込めないでいた。
「ちゃんと言うから、俺を見て……」
駿平は言葉と同時に、那月の顔に手を当てそっと上を向かせた。

「しゅん……?」
「俺、那月さんが好きだよ。だからキスもしたいし抱きたい。俺じゃ駄目?」
「え……?」
今とても大事な事を言われた気がしたが、耳がガンガンして上手く言葉を拾えない。
反応の薄い那月に向かって、駿平はもう一度言葉にした。
「那月さん、好きです。俺の恋人になって下さい」

那月は下から腕を伸ばし、駿平の首に回し……そして引き寄せた。
今は言葉が出ないから……だから那月は返事の代わりにキスをした。



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COMMENT - 3

ちこ  2011, 05. 11 [Wed] 06:53

おおっ!!
駿平、那月さんを傷つけるような言動は許さんぞ~~~っ・・・那月さんちょっぴり泣いちゃうじゃないかっ(≧▼≦)
『キスは大切な人と・・・』って拒否したのは駿平としたいけど、自分のじゃないからってツライ気持ちから出た言葉だぞ~~~こら~~っ!!駿平、そこに正座ッ!!
そうだな~男らしくズバッとは言えないか・・・う~ん(;_;)
もし振られたときは那月さんの側にもいられなくなるしね・・・(_´Д`)ノ~~
どうせなら、押し倒す前に言おうぜ!とりあえずちゃんと言えたから~よしよし(*^□^*)

では、後の説教はけいったんさまとNKさまにおまかせしま~す(・∀・)ノ
よろしくね~(≧▼≦)

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NK  2011, 05. 11 [Wed] 07:23

えっ、お説教のリレーですか?

那月さんの涙目とナイスなリアクションに
ちょっと腰引けてるけど、相手の目を見て告白したから「よしよし」と
褒めてあげようと思ってたんですが。。。
男らしくズバっとですか。
(思案中…思案中…)
「気合だぁ・気合だぁ」の元格闘家のお父さんか、赤いマフラー(タオル?)の格闘家の方に闘魂注入していただいたら如何でしょう。

そこの外野はうるさいと作者やファンの皆様に叱られそうな。。。
けいったんさま何か妙案は?

Edit | Reply | 

けいったん  2011, 05. 12 [Thu] 00:23

お説教リレー受け取ったり~♪

ちこちゃんも NKたんも もうコメが 面白すぎ~(〃^∇^)o彡☆あははははっ

気合のパパンも 1・2・3のダァ~おじさんのパンチも 登場させるなんて NKたんは プロレス好き?(笑)

じゃぁ 私は 誰を登場させたら・・・エト・・(:´・ω・)y-~
機関銃トーク炸裂な出っ歯さまの24時間耐久説教か、過激な突っ込みが売りの 下町のタラコ唇さまの脳天に響く連続突っ込みパンチでしょうか?

それとも 母上であるkikyou様のカミナリが 一番いいのかな?

「駿平!テメェー、物には順序ってぇのが あるのを 知ってんのかっ! 皆様が 怒ってらっしゃるじゃネェ~かっ! これからは 気をつけろってんだよ!バ~カ!!~-y( ▼д▼) 、ペッ」。。。私が 言っちゃた゚+。(〃ω〃)ゝ。+゚

では 駿平、那月、続きを どうぞ~♪'`ィ ドーゾ⊂(。・ε・。)...byebye☆

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