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俺、武藤駿平 6

 07, 2011 00:53
昨日の今日で体は倦怠感でいっぱいだったが、金曜日に仕事を急に休むわけにも行かずに、那月は通常通り出勤していた。
時計を見ると、もう定時は少し過ぎ19:30を示していた。
「はぁっ」那月は大きく溜め息を吐き、ジャケットを羽織って、会社を出た。
会社といってもそう大きい会社ではない。
だが社長が以前に大手アパレルメーカーのやり手社員だった為に、そのツテで仕事が途切れる事はなかった。

那月がこの会社に決めた最大の理由は、フレックス制を取り入れている事だった。
朝も通勤ラッシュから逃れられ、帰りもそう混んではいない。
学生時代から混雑が苦手だった那月の就職の第一条件だったのだ。
本当なら電車通勤のいらない場所に引っ越したかったが、この辺のマンションは那月の給料では予算オーバーだった。

だからといって今のマンションが気に入らない訳ではない、むしろ気に入っていた。
オートロックは必須と言って康二が探してくれたマンションなのだ。
未成年である駿平の保護者代わりとして、康二も部屋の鍵を持っていて建物の中には勝手に入ってくるが、部屋の中までは許可なく入る事もなかった。

那月にとって、同居人の駿平と康二の存在は大きかった。
だが昨夜のような事態に陥ると、駿平に頼る訳にもいかない。
(あのまま、康二が来なければどうなったのだろうか?)
ふと恐ろしい想像に大きく頭を振った。


「えっ?」
「やあ……」
会社が入っているビルの外に出ると見知った顔の男が、手持ち無沙汰な顔をして立っていた。

「駿平君……?どうしたの?」
「ちょっと近くを通りかかったから、そろそろ仕事終わりかな?って思って」
「……もしかして、ずっと待っていてくれたの?」
だが駿平はその問い掛けには答えず、歩き始めた。

那月はそんな駿平に追いつき肩並べて歩いた。
「ありがとう……」
「いや……通りかかったって言ったじゃん」

駿平は、本当は聞きたい事は沢山あったけど、那月が話してくれるまで待とうと思っていた。
嫌な事を無理に聞いて、今の穏やかな生活を壊したくは無いと思っていた。
「ご飯食べてく?奢るよ?」
「やった!待っていたか……いが……いや何でも無い」

結局二人は最寄りの駅に降りてから、駅近くのラーメン屋に入った。
「本当にラーメンでいいの?」
「うん、ラーメンと炒飯と餃子喰うから」
那月に遠慮しているのかいないのか、若者らしい食欲旺盛さを駿平は見せていた。

「あのさ……もう大丈夫なの?」
駿平はラーメン丼から顔を上げないで、何気なくそう聞いてきた。
「うん」
「そっ、餃子お代わりしていい?」
「何皿でもどうぞ」
駿平はそれだけは確認しておきたかったみたいだ。
そしてそれ以上は何も聞こうとしない駿平の、美味しそうに食べる顔を、幸せそうな顔で眺めていた。

「ご馳走様、あー喰った!もう明日の昼までは何も喰わなくてもいいや」
ラーメン屋を出ると、大きく伸びをしながら駿平が明るく笑った。
「はは、無理だね。食いだめと寝だめは出来ないからね」と那月も笑った。
「いや、寝だめもしたい」
「……ごめん」
駿平の無意識の言葉に昨夜眠れなかった様子が判り、那月は小さく詫びた。

「はぁ、何謝っているの?春は何時間寝ても眠いんだよ」
「そうか、まだ18歳だもんなぁ、いいなぁ若いって」
「なーに年寄りみたいな事言っているの?那月さんも充分若いじゃん。康二と同じ年だとは思えないよ」
「ふふ、康二に失礼だよ」含み笑いをする那月と肩を並べて、マンションへの道を歩いた。

(康二とはどういう関係なの?)
出かかった言葉を駿平は何度も呑み込んだ。

「ねぇ駿平君、彼女とか出来た?」駿平は突然の問いかけに驚いて歩みを止めた。
「彼女なんかいないよ」ぶっきら棒に答えると「そうか、早く出来るといいね」と那月に言われ、むっとした駿平は「那月さんには関係ないじゃん」とつい言ってしまった。

「あ、ごめん……そうだよね関係ないよね」
寂しそうに謝る那月にも何故か腹が立つ。
(あー!俺って本当にイヤな奴)
駿平の中で、訳の判らない感情が渦巻いていて、それをコントロール出来ないでいた。

二人がマンションに到着した時、ちょうどエントランスから人が出て来た。
「おう、一緒だったのか?ここの管理組合にちょっと用事あってな」
そう呑気な顔で言うのは、今駿平が一番会いたくない相手康二だった。

駿平にはあまり見せない優しい顔で「那月大丈夫か?」と声を掛けながら、那月の肩に手を置いた。
それを見て駿平は何かが切れた気がした。
「俺、友達ん所遊びに行って来るから、今日は帰らないからどうぞごゆっくり!」そう吐き捨てるように言うと、踵を返した。

「駿平君!」
後ろで自分の名前を呼ぶ那月の声が聞こえるが、今の駿平は振り返る事が出来なかった。



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COMMENT - 4

梨沙  2011, 05. 07 [Sat] 22:45

( * ^)oo(^ *) クスクス

駿平~ 完全に一人で回ってますね(;´д`)トホホ
康二との仲を勘ぐるなんて(~_~;) でも 康二にもいい人いたんですね(*^.^*) こちらのCPも気になりますが…
今は駿平と那月ですね(^_-)
駿平は今後どんな反応・行動を起こすんでしょうね!?
楽しみです(⌒~⌒)ニンマリ

Edit | Reply | 

ちこ  2011, 05. 07 [Sat] 23:36

5、6話をまとめ読み~(//∀//)
ラーメンでザー〇ンの黒天使のお話を思い出してしまった(//∀//)キャーッ
ごめんなさい(≧▼≦)
駿平くん、勘違いしちゃいましたね~っていうか普通この状況じゃ、勘違いしますよね~(≧▼≦)
いや、その勘違いが愛を育むのだ~(≧ω≦)

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kikyou  2011, 05. 08 [Sun] 00:49

梨沙さま  ( * ^)oo(^ *) クスクス

こんばんは。

ノンケ攻めの目覚めを書くのは難しいと気づき始めた作者です^^;

駿平のぐるぐるした気持ちを表すのに
私も一緒になってグルグルしていますヽ(゚∀゚)ノ

もう一気に那月に襲わせてしまおうか?と爆走しそうなのを抑えています。

これが最初で最後の年下ノンケ攻めの話になるかもしれません(笑)

いつも読んで下さってありがとうございます~

Edit | Reply | 

kikyou  2011, 05. 08 [Sun] 00:55

ちこさま

こんばんは。

ちょ、PCの前で吹き出しそうになりましたよ^^;

そう言えば、ザ○○ンありましたネ。

(//∀//)登録しちゃいました。
でも顔文字って、何で登録したかを直ぐに忘れるんですよ……

駿平は、まだまだ自覚できませんネ。
とんでもない方向に行ったり、また戻ったり忙しいです。

早くまとめてやりたいと思うのですが、まだ先は見えませんよ^^;

連休もあと少しですね。
休み疲れのないようにネ(゚∀゚)

コメントいつもありがとうございます。

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