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俺、武藤駿平 2

 03, 2011 00:00
「パタンナー?」
「そう、服から型紙を起すんだよ」
「型紙?」
珈琲を淹れたので那月にも持って来てやった駿平はパソコンの前で操作している那月に仕事の事を聞いたが、そういう事に興味が無かった駿平には何が何だかさっぱり判らなかった。
「ふーん、CADで引くんだ?まるで設計図だな……」
「まぁね、それよりもう大学も慣れた?」
目頭を押さえながら那月は疲れた顔を駿平に向けた。

「俺は慣れたし、高校から一緒の奴も結構多いし楽しいよ。それよりも那月さん疲れているんじゃないの?」
「いや、ちょっと細かい作業だから目が疲れただけだよ」
家にまで仕事を持ち帰る程忙しいのに那月は夕飯を率先して作ってくれる。
「飯なんか作らなくていいのに」
「ついでだからね」

同居を始めて2週間が過ぎ、いつの間にか家事が分担されていた。だが駿平の役割は風呂掃除と乾いた洗濯物を取り入れ畳む程度しかしていない。
それ以外は殆ど那月が率先してやってくれていた。
「何か俺、すっごい那月さんに負担かけてるよなぁ」独り言のように呟き那月のベッドの端に腰掛けた。
「ついでだから……」何をしてもその言葉で駿平の事を優しく包んでくれる。

「那月さんの彼女になる子って幸せ者だな」
「ふふふ、そう?でも残念ながら彼女っていたことが無いんだよね」
「そんな冗談ばっか、那月さんがもてない筈ないじゃん」
駿平は本心でそう思っていた。綺麗で優しい那月は男の駿平から見ても敵わないと思うほどの良い男だった。

「駿平君こそ、もてまくりでしょ?」
「あ……ま、適当にね」
照れて言葉を濁す駿平を那月は優しい顔で見つめた。
筋肉質で185㎝ほどもある体躯と、今時のアイドルを精悍にしたような少年から青年に変わろうとする危うさも魅力を醸し出していた。
この時期の18歳と24歳は見た目も考え方も大きく違う。

「18歳か……いいな若さって……」
那月は頭の中で考えた事をつい言葉として出してしまった。
「何言っているんですか、那月さんだって若いじゃん。康二と同級生には思えないよ」
駿平の従兄弟の武藤康二は妙に落ち着きがあり、実年齢よりはいつも上に見られる事を気にしながらもそれを利用するようなタイプでもあった。

「でも康二は優しくて頼りがいがあるよ」
「そうかな……?」
駿平は何故か判らないが那月が康二を褒める事が面白くなかった。
そんな自分に戸惑いながら「じゃ俺風呂掃除するから」と言うと「いつも悪いね」と返され少し照れながら那月の部屋を後にした。

駿平は那月という同居人に恵まれた自分は凄いついている奴だと思っていた。
兄弟のいない自分は本心では康二を兄のように慕ってはいたが、那月はそういう存在ではない。
(じゃどういう存在なんだ?)と自問自答しても(ま、いい人だし)としか今は答えは見つからなかった。

そんなお互いのプライバシーを尊重しつつ何の問題もなく同居生活は順調に過ぎていった。
そして二か月過ぎた頃……
駿平はバイトも無く遊びにも出かけないで珍しく夕方には部屋に戻っていた。
(那月さん今日は遅いのかな?夜食になる物でも作ってやろうかな?)と思い立ったのは、もう夜も10時を過ぎた頃だった。

―――バタン。

那月にしては少々乱暴な音を立て玄関の扉が閉められた。
「那月さん?」その物音に駿平が玄関まで行くと青褪めた顔で那月が立っていた。
「お帰り、どうしたの何かあった?」
駿平の声に一瞬驚いたような顔を向けたあと「あ、ただいま……いや別に……風呂入れるかな?」と帰る早々そんな事を聞いて来た。

「うん入れるよ、俺はもう入ったけど」と駿平も怪訝そうな顔をして答えた。
「あ……じゃあ風呂入って来る」
「うん……」

自分の部屋に鞄を置き直ぐに戻って来た那月が風呂場に消えた。
何かいつもと違う那月の態度に駿平は戸惑いよりも心配の方が大きかった。
駿平は気になって風呂場に向かった那月の後を追った。
脱衣場の外から「那月さん大丈夫?」と声を掛けようとして、中から那月の嗚咽のような声が聞こえノックしようとしていた手を宙に彷徨わせた。


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