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この世の果てで 20

 20, 2010 00:00
「俺はお前を許さない」
自分は誰かに恨まれるような事を知らずにしていたのだろうか?
拓海は憎しみの篭った言葉を一方的に投げられ、戸惑っていた。

人は生きていれば知らず知らずに誰かを傷つけてしまう事はあるだろう・・
だが今までの自分がこれほど激しく恨まれるような生き方をしてきただろうか?
あまり人とは関わらず、誰にも迷惑を掛けないように懸命に生きてきたと思っている。

そしてその電話を掛けてきた人間とこの部屋の写真を破った人間は同じなのだろうか?
いくら考えても結論など出ない。

戸締りを今一度確認して、大学に行くべく部屋を出た。
だが気持ちは沈んだままだ。
丁度良いタイミングで瀬田の部屋に住み込むで働く事になった。
なんだか今の拓海にはそこが安心できる暖かい場所のような気がしてきた。

拓海は講義にも集中出来ないで1日を終えた。
引越しの準備でアパートに帰ろうかとも思ったが
今朝の事を考えると、自分の部屋に帰るのも気が重かった。

『社長の部屋の掃除でもしようかな・・・』
まだ全然掃除してない部屋も、食料品の買出しもしたかった。
電話して確認してから行った方がいいかな?
そう思いながらも足は瀬田のマンションに向かっていた。

電車を降りてから公衆電話を探し、今朝聞いた瀬田の携帯に電話してみた。
その電話は直ぐに繋がり低い瀬田の声がした。
「あの、尾崎ですけど・・」
「おお、どうした?」
「あ・・マンションの掃除に行っても構わないでしょうか?」
「自分の部屋の片付けは良いのか?」
「・・はい大丈夫です」
「ん?元気が無いようだが?」
「い・いえ・・・あの勝手に入ってもいいんでしょうか?」
「勿論、昨日契約書を交わしただろ、れっきとした家政夫だ」

その言葉にほっとした拓海は
「では伺います、あの・・夕飯の支度した方がいいですか?」
「ああ頼む、簡単な物でいいぞ、出来たら酒のツマミになりそうな物で」
「はい、何時頃にお帰りですか?」
「ああ・・いいなぁ、まるで新婚の奥さんのような言葉だなぁ」
「社長、俺はハウスキーパーですから!」
「まぁ硬い事言うなよ、8時頃だな・・」
「はい判り!・・あっ」その言葉の途中でコインが無くなり切断された。

「ま、いいか・・・公衆電話から携帯に掛けると割高だな・・」
拓海は殆どの用件が終わっていたから
再度掛けなおす事は不要に思って、その場を離れた。

駅から5分もしない立地条件の良い場所にそのマンションは聳え立っていた。
『高そうなマンションだよな・・・』
エントランスで昨日と同じように
「お帰りなさいませ」と声を掛けられる。
自分が不審人物に間違われないか心配したが、
特に呼び止められる事なく瀬田の部屋に入ることが出来た。

瀬田が帰って来るまでまだ4時間もある。
ゆっくり片付けて、出来たら少しここで講義のノートをまとめたいと考えていた。
今日は自分のアパートでは集中出来ないような気がしてた。

昨日はリビングが酷い有様だったが、
他の部屋は特に悲惨な程散らかっては居なかった。
『ま、ここは寝るだけだしな・・』
瀬田の寝室などは綺麗なものだった。
結局散らかっていたのはリビングだけだったが、
拓海はそれを不思議とも思わなかった。

1時間もした頃だろうか、突然玄関のドアが開いて息を切らせた瀬田が入って来た。
「しゃ・社長!如何されたんですか?」
まだ帰宅には早すぎる、驚いて拓海が声を掛けると、
突然瀬田は拓海を胸に抱きしめて来た。

「電話が突然切れたから」
「えっ?」
「何かあったかと・・・良かった無事で」
「社長、そんな大袈裟な」
拓海の無事が判ったのに瀬田は拓海を抱いた手を離そうとしなかった。





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COMMENT - 1

ぱせり  2010, 09. 21 [Tue] 12:41

拍手コメントの

Aさま Rさま

メッセージありがとうございます!

なかなかBLにならなくて、書いてる本人が一番焦っています。
読んで下さってありがとうございます。

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