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太陽が見えない 7(観潮楼参加SS)

 28, 2011 01:49
<注意>昨日の夜11時半に6話を更新しております。
近い時間帯での更新ですので、まだ6話をご覧になってない方もおられるかな?と思いまして・・



「ねぇ何処連れてくの?」
「ウルサイ黙れ!」余程勝手にチケットを譲った事に腹を立ててるのだろう・・
そう思うと馨もこれ以上何も言えなくて、ただ黙って太陽の言う通りにしようと思った。
そうしているうちにタクシーが見慣れた所で止まった。

「運転手さん、直ぐ戻って来ますから、このまま待ってて下さい」
そう運転手に声を掛けると太陽は馨を残しタクシーを降りた。
「おお勝悪かったな」玄関先で待っていた勝を労った。
「いえ・・これでいいですか?」
「ああ足りない物があったら向こうで買えば済む事だから、ありがとうな」
そう言うと太陽は勝からボストンバッグと厚手のコートを受け取った。

「太陽さん、俺・・カニ食いたいって兄貴に言っといて下さいよ」
「ああ、でかいのを送らせるよ」
「あの・・・兄貴宜しくお願いします・・・最近何か思いつめてたから」
「任せておけって」そう最後に笑顔を見せて、太陽はタクシーに戻った。

馨のバッグとコートを持って戻った太陽を目を白黒させて馨が見ていた。
「運転手さん、出して下さい」そう声を掛け告げた先は太陽の家の住所だった。
「た・太陽・・・?」
「俺はまだお前と口利く気分じゃないんだよ」
「・・・・」
取り付く島が無い太陽を見て又馨は口を噤んだ。

太陽の住むマンションにタクシーは横付けされた。
「降りろよ」
馨もおぼつかない足でタクシーから降り高層マンションを見上げた。
「こんな時間にお邪魔したら、ご両親に迷惑かかるから・・」とマンションに入る事を暗に拒否した。
「誰もいないよ家、お袋は旅行だし、親父は女ん所じゃね?」

あまり家庭環境に恵まれない太陽は、高校の頃からよく馨の家に遊びに来ていた。
一般サラリーマン家庭で何ら面白い事など無いのに、太陽は頻繁に訪れていたのだった。
だから馨の弟の勝とも兄弟のように仲が良かったし、勝は馨のいう事よりも太陽のいう事をよく聞いていた。
大学生になってからは、外で遊ぶ事が多くなりあまり行き来はしなくなったが、それでも時々馨の家で夕飯を食べ、泊まったりしていた。

だが、太陽への気持ちを自覚した馨にとってそれはだんだんと苦痛になって来ていて、理由を付けては泊まりに来る事を断ったりしていたのだ。
反対に馨が太陽の家を訪れる事は殆どなかった。

「入れよ」鍵を開け玄関の扉を開くが、太陽の言った通り部屋の中には人の気配などなかった。
余程慌てて出てきたのだろう、テレビも点けっぱなしで、部屋の灯りも光々としていた。
「風呂は?」ぶっきら棒に太陽が聞いてきた。
星野に会う前に風呂は済ませていたから「入った」と馨も短く答えた。

「・・・・」太陽の沈黙が今の馨には怖かった。
少しの沈黙の後「俺も入ったから、もう寝るぞ。明日早いからな」
「太陽・・・」
「俺はお前がイヤだと言っても連れて行く、どうしても行きたくないって言うなら3日間この部屋にお前を監禁する」
「太陽・・何言って・・・」
「俺だって何言ってるか判らないよ!お前がそんなに俺の事嫌ってるなんて・・知らなかったよ」
太陽の口調が急に弱々しくなった。

「違う!嫌ってなんか・・・嫌ってなんかいないから」
「じゃどうして!星野さんにチケット渡したんだよ?」
「太陽が僕と行くよりも、女子と行った方が楽しいんじゃないかって思って・・」
馨はまさか太陽と星野の話を立ち聞きしたとも今更言えなかった。

「はぁっ・・もういい、寝る」不機嫌そうに太陽が自分のベッドに入り馨に背中を向けた。
馨はまさか太陽のベッドに潜り込む訳にもいかず、暫くベッドの横に立ち尽くしていたが
「リビングのソファ借りるね」と声を掛けて部屋を出ようとした。
「ここに寝ればいいだろ?細っこい馨が寝たくらいじゃ窮屈じゃないよ」
実際に太陽のベッドはダブルベッドで、大人二人が眠るにも支障のないサイズではあった。

「でも・・・」
「いいから早く寝ろよっ」突然腕を引かれて、馨は太陽に覆いかぶさるように倒れこんだ。
今の太陽には逆らえない・・・
馨は身を縮めるようにベッドの中に滑り込み端っこに寄り太陽に背中を向けた。

こんな太陽は初めてだった。
太陽の怒りも部屋に入ってからの冷たさも、今の馨には辛いだけだった。
自然と涙が零れ、シーツに染みを作っていく。
背中合わせの太陽に気付かれないように、嗚咽を堪えただ涙を零し続けた。

「・・・・馨・・・寝たのか?」
きっと今返事を返したら嗚咽が漏れてしまう・・・馨はぎゅっと目を瞑って返事をしなかった。
「馨・・俺星野さんから電話もらって、凄いショックだったんだぜ・・」
「俺今度の旅行凄い楽しみにしてたから・・それは俺だけだったのかな?って思うとさ・・」
「馨・・本当に寝たのか?」
「馨・・何か背中合わせって・・別々に寝るより寂しいな・・・」

何の返事もしない馨に向かってなのか、それとも寝てると思っての独り言なのか太陽はただ一人話し続けた。
ごそごそっと布団が動いて、太陽がこっちに向き直ったのが判った途端、馨の体が強張った。
「馨・・こっち向けよ」
太陽の手が馨の肩に置かれた。
馨は強張った体のまま、肩を揺すって太陽の手を祓った。

その途端「そんなにイヤかよっ!」
太陽の激しい言葉と共に再び肩を掴まれた馨の体が正面を向かされた。
「馨・・・お前泣いて?」
馨はそんな太陽から顔を背けたが、それを太陽の手が阻止して体ごと太陽に向かされてしまった。




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COMMENT - 11

ちこ  2011, 01. 28 [Fri] 09:14

はあ~っ゜+。(*′∇`)。+゜
kikyouさまのお話に出てくる男の人って、なんてロマンチストが多いんでしょ(*/ω\*)うっとり~♪

ロマンチストすぎて伝える場所と時期を誤る・・・

いや~ん(≧▼≦)

馨くんを泣かせちゃったじゃないですかぁ~(T_T)

強引な太陽くんと気弱な馨くん♪
太陽くん外堀はバッチリなんですね~(*^□^*)
長年かかって外堀を埋める(笑)
これは北の大地に降り立つ前になにやら動きがっ・・・
うきゃ~~~~~(//∀//)
泣かせちゃいけませんっ、啼かせなきゃ(笑)し、失礼しました(≧▼≦)


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甲斐  2011, 01. 28 [Fri] 09:34

太陽の鈍感
意地悪
ばかばか~
馨を泣かせる太陽にちょっと言ってやりたくなりました
だって太陽以外はみんな馨の気持ちをわかってて
応援してるっていうのに・・・
ちょっとしたことでも傷つきやすい馨の一途な想いが
早く伝わるといいのに

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けいったん  2011, 01. 28 [Fri] 10:28

馨が 泣いちゃった

太陽を 怒らせ 誤解されて~
馨が ここで 反論!!・・・って 出来ればいいのですが、思った事を 言えない子なのよね~ ズ―――(-ω-ll)―――ン
長い付き合いしてるんだから(友人として) 馨の性格は 分かってるでしょ!
太陽、お願いだから 馨に 優しく接してあげてね。

寒さで 脳みそまでが かじかんでる、けいったんでした。
ブルブル ((;゚ェ゚;)) ブルブル...byebye☆

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tukiyo  2011, 01. 28 [Fri] 17:26

ぐふふふ~

はぁぁぁ萌えますわ~~。
kikyouさまは私の萌えポイントを的確に押してくださる
名指圧師のようです。萌え指圧師?たまりましぇん。
ああっ・・・kikyouさま、そ、そこ。

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-  2011, 01. 28 [Fri] 21:58

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

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jun  2011, 01. 29 [Sat] 10:47

ああ、二人とも大変ですね。
でも、太陽には馨の気持ち分かったみたい。
次回、太陽から告白ですかネ。
ワクワクして読みます。

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kikyou  2011, 01. 31 [Mon] 11:28

ちこさま

こんにちは。

> ロマンチストすぎて伝える場所と時期を誤る・・・

これには笑ってしまいました(*≧m≦*)ププッ

そうなんですよねぇ・・・馨を泣かしてしまいました。
どこか素直になれない二人です。
我を突き通すことが出来ないんですよね。

北の大地に降り立つ前に(*`▽´*)ウヒョヒョ

コメントありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ

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kikyou  2011, 01. 31 [Mon] 11:32

甲斐さま

こんにちは。

太陽鈍感ですねぇ・・・
でも太陽なりの何かがあるのです^^
(私も最近気付きましたが(゚ω゚;)。o○(ぇ!?)

馨の一途な思いは、必ず伝わります。
ご安心下さい^^

コメントありがとうございます(*^▽^*)

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kikyou  2011, 01. 31 [Mon] 14:03

けいったんさま  馨が 泣いちゃった

こんにちは。

なかなか思うように行かない二人です。

判っているけど、どうにもならないって感じです。
今は・・・じきに・・・

> 寒さで 脳みそまでが かじかんでる、けいったんでした。
> ブルブル ((;゚ェ゚;)) ブルブル...byebye☆

いや~最近凄い寒いですよね。
風邪ひきやすいけいったんだから、気をつけてネ。

ではコメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 01. 31 [Mon] 14:06

tukiyoさま ぐふふふ~

こんにちは。

最近はタイトルを楽しみにしています^^

ポイントに入りましたか?!
えへへ、嬉しいですねぇ。

>ああっ・・・kikyouさま、そ、そこ。

な・なんだか・・・かなり効いてますねぇ(;´@へ@`)アゥ…

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 01. 31 [Mon] 14:12

鍵コメ 8さま

こんにちは。

遅いお返事で申し訳ないです(´・ω・`;A) アセアセ

太陽が見えない・・・・あぁタイトルに結びつけて終われるのでしょうか?^^;

馨と太陽・・・うまく行く予定なんですがねぇ・・
何かが足を引っ張って、私の行く手を塞いでいるみたいなんです^^;

でも、もう直ぐ進展しますので、また読みに来て下さいネ。

コメントありがとうございました(*^_^*)

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