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この世の果てで 16

 16, 2010 00:00
いつ引越しして来るんだ?と聞かれても
全く予想しなかった展開に拓海の頭が着いて行かない。
「あ・あの・・来月には・・それまでは通いで・・」
「駄目だ、2・3日のうちには引越しして来い」

拓海は昨日、来月分の家賃を払い込んだばかりだった。

「引越しの手配はこちらでするし、必要な物は此処に揃っている」
それはそうだ、拓海の使い古した家電や家具など
この部屋には不釣合いの上、必要はなかった。
身の回りの僅かな物だけを持ってくればいい訳だ。


拓海が焦る頭で考えていると、瀬田が携帯に手を伸ばし
「ああ俺だ、引越しは何時がいい?」
突然主語の無い電話を掛けている。

「上手く行ったみたいですね」電話の向こうで狭山が言った。
「まあな、で?」
「明後日の夕方6時以降はスケジュールが入っていません」
「そうか、ではそれに合わせて手配してくれ」
「で、今日は一緒に風呂くらいは入れそうですか?」

狭山の助言とも取れる言葉にニヤリと笑い
「じゃ頼んだぞ」と言い電話を切った。

「尾崎君、明後日の夕方に引越しが決まった」
「えっ?俺のですか?」
「勿論だ、それとも俺が君のアパートに引越しするか?」

瀬田の無茶苦茶な言い分に
『それじゃ俺が家政夫になる意味ないだろう?』と突っ込みたいのを抑え
「判りました・・・・明後日ですね」
結局何もかも瀬田の言うがままになってしまった。

「じゃ今夜は俺帰ります」
拓海は帰って明日の準備や引越しの準備をしたかった。

「風呂に入りたい」突然の言葉に
「はあっ?」と聞き返した。
「風呂に入りたいから準備してくれ」

『今日の分もちゃんと日割り計算でくれるのだろうか?』
もうしっかり家政夫扱いする瀬田に対して、少々セコイ事を考えながらも
「風呂は何処ですか?」と訪ねた。

「こっちだ」と機嫌良さそうに拓海を風呂場に案内する。
風呂場に案内され、ドアを開けた拓海は又もその広さに驚く。

設備の使い方など説明受けた拓海が
「ちょっと掃除しますから、あっち行ってて下さい」
瀬田を追い出し、手際よく風呂掃除をして湯張りスイッチを押した。
湯が溜まると、後は自動的に湯張りが停止する。

「社長、準備出来ましたから、湯が溜まったらどうぞ入って下さい」
「湯が溜まるまで、俺が待つのか?」
内心舌打ちしながら拓海が「はい、俺が待ちます」
少々不貞腐れた拓海に向かい
「まあ、此処に座って休憩しておけよ、そんなに急に働かなくても・・」

『社長が俺をこき使ってるんだけど・・・・』
ソファに座り、経済紙を広げる瀬田の正面に腰を降ろした。
「はぁっ」自然と溜息が漏れた。

本当に何という1日だったんだろう・・・
溜息も吐きたくなるってもんだ。

今日はもう他の部屋の片付けなどする気にもなれずに
自分の鞄から借りていた本を広げて、黙って読んでいた。
20分程すると、風呂場の方から湯が溜まった事を知らせるアンスンスが聞こえた。

拓海は風呂場に行き、確認してからリビングに戻り
「社長、風呂は入れますから」と声を掛けた。

「おお、ありがとう」
「じゃ俺はこれで・・・・」拓海が立ち上がると
「背中は流してくれないのか?」と図々しい言葉が聞こえた。

「そ・それも月給の中に入ってるんですか?」
「勿論だ」即答する瀬田に呆れながらも
契約書に書いてあったのだろうか?と
契約書をちゃんと読まないでサインした自分に腹が立った拓海だった。







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