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愛しい人へ 27

 19, 2010 12:29
「触れてもいいか?」などと、とんでも無い事を口走ってしまった。
「はい」と頷く麗に驚きながらも、伸ばす手を止められなかった。
麗の肋骨の辺りに指を伸ばし、そして掌全体で触れる。
吸い付くような肌に身が引き締まるようだった。

その手をすーと伸ばし、心臓の上で止まる。
『ドキッ ドキッツ』麗の大きな鼓動を掌に感じ
「麗、ドキドキしてる」と自分を落ち着かせるように言った。
「・・はい」

掌の中に息づく小さな尖りにもっと触れたいという衝動を抑え
「冷えるから湯に浸かれ」と乾いた声を咽から搾り出した。
杉浦の手から解放されて、ほっとしたように麗はくるっと背中を向け体を沈める。

まだドキドキしている・・・胸の鼓動を聞かれたく無い為に背中を向けたしまった。
『は・恥ずかしい・・・もう少しで体が変になるところだった・・・』

そしてかたや杉浦も『俺は少し変だ、あいつにもっと触れたいと願っている・・・』

その後、杉浦に普通に髪を洗われ、触れられる事もなく風呂から上がった。
「杉浦さん、僕明日からバイトに出ていいですか?もう痛みも無いし・・」
「無理しなくていいけど、バイト出たいのか?」
「はい」麗は少しでも多くバイトに出て、杉浦に借りた金を返したかった。

「ま、お前が大丈夫ならいいけど」
「はい、ありがとうございます」
嬉しそうに部屋に戻る麗の後姿を見ながら
粕谷の話だと随分と皆に可愛がられているようだった。

それは望ましい事だけど、少し寂しい気もした。
何時までも自分だけの手元に置いておきたいような・・・

『それは、貴方があの人に恋しているからよ!』
リビングの付けっ放しのテレビから聞こえて来た台詞に思わず振り返る。
『いつも貴方の目はあの人の姿を求めている、そしてその姿を捕らえた時の貴方の目には
私の姿なんか映ってないのよ!』
三角関係の縺れか?そんなドラマが流れていた。

杉浦はその台詞があたかも自分に向けて言われたような気がした。
『俺が麗に恋してる?まさか男だぜ麗は・・・』
杉浦は今まであまり女にのめり込んだ事が無かった。
気が合えば付き合ったが時が経つと次の女へと移った。
『愛してるの』と縋り付かれても余計に醒めるばかりの恋愛だった。

『貴方は、本当の愛を知らない』そう言われた事も一度では無かった。
本当の愛なんて知らなくても生きていける。
『貴方と離れたら生きていけない・・・』
そう言って泣く女に優しい言葉を掛けた覚えも無かった。

もし麗がこの部屋から居なくなったら?
杉浦は胸が締め付けられるような苦しさを感じて、驚愕した・・・
『俺が麗を?』再び自分に問うてみる。

「杉浦さん?」何時の間にか目の前に麗が立っていた。
「あの・・・包帯上手く巻けなくて・・・・どうかしました?」
麗はまだ少し赤くなった火傷の跡を手で庇うように
「・・寝ている間にベッドに擦り付けてしまったら薬で汚してしまうし・・・」
と言い訳めいた言葉を口にした。

平静を装い「どら、貸してみろ」と麗から包帯を受け取りながら
麗の白い手をとり「ああ、水脹れになってきたな」
この手に火傷の跡が残らなければいい・・と思う。
杉浦はもう何ひとつ麗の体に痕を残したくなかった。

「ほら出来たぞ」そう言って麗の手を放す。
「ありがとうございます」
そう言う麗は部屋には戻らず、杉浦の隣に腰を降ろしテレビに目をやる。

杉浦はリモコンでチャンネルを切り替えお笑い番組に切り替えた。
「へえー杉浦さんも、こんな番組見るんですか?」意外だと麗は言う。
「いや、別に・・・他に見たいのがあるんなら好きなの見ろよ」
麗も何か見たい訳じゃないけど、杉浦の傍にもう少し居たかったからチャンネルを回す。

以前流行した洋画を上映していた・・・
暫く見ていると画面にはキスシーンが映し出される。
だからチャンネルを代えるというのもワザとらしい。
二人黙って画面を見ていた。

まるで中学生が親とテレビを見ている時にラブシーンが出てきて
両方とも固まってしまう、そんな気分だったのだろう。
いやに咽が渇き、動作がぎこちなくなる。
CMに切り替わり、麗がほっとしたように体の力を抜いたのが判った。

杉浦は「ガキじゃあるまいし、何緊張してるんだよ」
と自分の事は棚に上げて麗を揶揄する。
「そうですね・・・僕はこの前3人とキスもしてるし・・」そう言って麗は笑った。
「えっ?  あっ?・・・」
そう言えば以前、水野に手を出され、固まってる麗に粕谷・西条がキスした事があった。

「はは・・・男ばっかりだな」揶揄するように杉浦が言うと、麗は悲しそうに俯いてしまった。
『くそっ!』杉浦は心の中で唸った。
「す・杉浦さん、男ばっかりにキスされた僕汚いですか?」
麗は縋るように杉浦を見詰めた。

その麗の悩ましげな瞳に吸い込まれそうになりながら
「・・・汚くなんかない」そう吐き出すように言うと
杉浦は麗の腕を引き寄せ、その唇に自分の唇を重ねた。

「!」麗が息を呑み、体を強張らせる。
それでも杉浦は貪るように唇を重ね、舌を捩じ込む。
逃げる麗の舌を捕らえ、絡め弄る。
「はぁ・・・」唇の隙間から麗の吐息が漏れた。

その声に煽られ、更に深く絡めて行く。
歯列をなぞり上顎の裏を舌で擽る。
麗の頬は上気し、頬に手を当てると熱く、閉じた睫毛はフルフルと震えている。

「・・麗・・」名前を呼び、瞳を開けさせる。
その瞳は輝き潤み、今にも涙が零れ落ちそうだった。
「麗・・・」もう一度名前を呼ぶ・・・・

その瞬間に、麗の両腕が杉浦の首に回され、しがみ付いて来た。
「あぁ・・」小さな吐息と共に頬を涙が零れ落ちた。



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