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愛しい人へ 24

 18, 2010 10:17
鮨やから戻ると、麗は風呂の仕度をした。
自分でやるという杉浦を「午前中に掃除は終わってますから、湯を張るだけです」
と制し、自分で風呂場へ行ってスイッチを押した。

今日1日くらい入浴しなくても問題ないだろうと思っていた麗だが
「俺が頭も体も洗ってやる」と何故か杉浦は張り切っていた。
「いいです!」
「遠慮するな」
麗は遠慮から断っている訳じゃないのに、その理由を話せないから・・・・

札幌の病院で初めて一緒に入浴した時みたいに、麗は引きづられてしまった。
何を言っても適わないのは重々承知だったが、それでも抵抗した。
ちょっと待ってろと言い、キッチンからビニール袋と輪ゴムを持って来て
麗の右手にビニールを被せ、輪ゴムで中に水分が入らないようにしてくれた。

「これで大丈夫だ」満足そうに頷き、さっさと中に入ってしまう。
麗は仕方なく、のろのろと衣服を脱ぎ後に続いた。
こういう時に普通の倍以上あるような浴室は困る、断る理由が見つからないからだ。
シャワーのノズルも2箇所に付いていた。

立ったままの麗にシャワーの湯を掛けながら
「なるべく濡れないように右手を上に上げろ」と言われ
麗は右手を肩より上に上げたままの状態で立っていた。

頭に湯が掛けられ、上手に洗われる・・・
「座ると、手が下がりやすいから、立ったままでいいよな?」と事後承諾だ。
「・・・気持ちいい・・・」ぽろっと本音が零れてしまい、慌てるが
「お前はいつも頭洗ってやると気持ち良さそうな顔してるな」と嬉しそうに言われ頷いた。
麗は自分がどんな顔をしているのか、どんな顔をしたらいいのか判らず目を閉じた。

シャンプーが終わり、体から離れようとすると「じっとしてろ」と言われ
身動きが取れなくなってしまった。
ソープを手で泡立て、背中を洗われた。
その手の感触に驚いて逃げようとすると
「心配するな、俺はゲイじゃないから」と揶揄するように杉浦が言った。

あのDVDを見てから余所余所しくなった麗が
杉浦がゲイでは無いのか?とまだ疑惑を持っているのじゃないかと考えていたから
安心させようと思って言った言葉だった。

『そんな事わざわざ言わなくても判ってますよ』麗は心の中に重い言葉の呑み込んだ。

労わるように背中を這う手がくすぐったい。
「本当にお前の肌はキメ細かいなぁ・・・」
杉浦は麗の吸い付くような肌に触れて溜息のように呟いた。

杉浦の泡まみれの手が背中を這い、尻の肉を回すように洗う。
そしてその手が指が・・・麗の隠された窪みへと落ちて来た。
「イヤーッ!」思わず麗の口から悲鳴のような声が上がった。
「我慢しろ!ここだって綺麗に洗わなくちゃ駄目だろ」
「ヤッ!自分で洗えるから・・・」
あまりの恥ずかしさと、体の芯から熱が溢れてくる感覚を誤魔化しながら抗っても
滑りの良い指が麗の窪みを数回行き来する。

『俺だったら他人に尻の穴など死んでも洗われたくない、だがこいつの体は隅々まで洗ってやりたい』
それが酷く矛盾な事だと杉浦は気づかず何かに憑かれたように指を動かしていた。

「もう嫌だ!!」麗はゾクゾクする感覚に耐えられなくなり声を荒げた。
杉浦からシャワーノズルを奪い取り、体の泡をざっと流して
振り向きもせずに、浴室から逃げるように出て行った。

杉浦は一体何が起こったのか・・・一瞬の出来事だった。
麗の居なくなった浴室で杉浦は呆然と立ち尽くしていた。
『俺は何をしてたのか?』
さっきまで麗の体に触れていた右手を見つめる。
柔らかい感触の尻からつるんと窪みに指を這わせると、尻の肉にぎゅっと力が入いる麗の
体の感触を思い出すように、ただ手の平を見ていた。

「あーあ、嫌われたかな?」口に出して呟き、体を洗いひとり湯船に浸かる。
杉浦は女と一緒に風呂に入り、湯船で乳繰り合い、結合した事もある。
しかし、女の体をあんなに丁寧に洗ってやった事など経験ない。

『これはセクハラ?一種の虐待じゃないか・・・』自分のした事に驚愕してしまった。
「麗・・・」あいつは俺の事許してくれるだろうか?
もしここを出て行くと言ったら、俺はどうする?



麗はバスタオルを頭から被りベッドの上に放心したように座っていた。
杉浦の指の感触が生々しく体に残っている。
後ろを洗う長い指が時折後ろから麗の陰嚢を掠める。
その時点で麗の雄は反応し始めていたのだ・・・
このまま続けたら、自分の欲を見られてしまう、そう考えたら1分1秒たりとも
あの場に居られなかった、そして逃げ出して来た。

「杉浦さん・・・・」麗が小さな声で呟く。
目頭が熱くなり、涙が零れる。
「杉浦さん・・・」もう一度呟き目をぎゅっと瞑った。

そして疲れた心を抱きながら麗は暗い眠りに堕ちていった。

麗が朝目を覚ますと、ビニールで包まれていた右手には新しい包帯が巻かれていたのだった。





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