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天使が啼いた夜 堂本紫苑~13~

 17, 2010 02:08
紫苑は部屋を出た足で以前自分が住んでいて今は深田たちに貸している部屋の前に立った。
玄関前からチャイムを鳴らす。
インターフォンごしでは無く直接中からドアが開けられた。
「紫苑、どうしたんだ?何かあったのか?」
深田の心配する言葉に「ううん、今日僕電車で行こうかな、って思って・・」
浮かない顔の紫苑に何も言わずに深田はまだ少し早いから中に入ってと紫苑を招き入れた。

「あれぇ?珍しいね電車なんて・・・社長は出張じゃないよね?」広海の問いに
「・・電車くらい乗れるから」
答えになってない紫苑の言葉に深田と広海は顔を見合わせたが何も言わずに
「あと5分待ってて」と言い支度の仕上げにかかっている。

「ごめんなさい、急かせてしまって・・」
「あぁ全然平気さ、今着替えるから掛けて待ってて」
深田に言われ、紫苑はソファに掛け二人の準備が整うのを待った。

奥の部屋に消えた二人は小声で「どうしたんだろう?喧嘩でもしたのかな?」と話し合っていた。
「ま、いいんじゃないか?紫苑だってたまには電車通勤も」
深田と広海は毎朝紫苑が社長の自家用車で通勤してるのを知っていた。
「う~ん、何かあるね」
広海は少し悪戯っ子のような顔をしてほくそ笑んだ。

「お待たせ~」広海の明るい声に「いえ・・」とだけ紫苑は答え立ち上がった。
「さあ行こうか?紫苑覚悟は出来てるか?」
「えっ?覚悟って?」
「朝の通勤ラッシュの覚悟だよ」
「そ・そんなの大丈夫です」言葉の割りには紫苑の顔は少々不安げだった。

3人仲良くマンションを出て駅まで歩いた。
「深田さんと広海さんは毎朝一緒に出られるんですか?」
「勿論、一緒に住んでるんだもん・・特別な事がない限り一緒だよ」
広海の言葉に紫苑は「そうですか、仲良いんですね」と微笑んだ。

紫苑は広海が幸せそうで良かったと心から喜んだ。
「堂本紫苑!何か元気ないぞ!」
発破を掛けられるように深田にフルネームで呼ばれた。
『堂本紫苑・・・・』自分は紫龍のパートナーなんだと改めて思うが
それ故に今朝の紫龍の言葉は許せない気がした。
自分を信じてないような言葉を吐かれ・・・思い出して又紫苑は寂しさが募ってきた。


「す・凄いですね・・・あっ!凄い・・・」
これ以上は入れないと思う程に小さな箱の中に押し込まれて行く。
どうにか3人近い位置に立っている事が出来て、紫苑は驚きながら
二人にそう感想を述べた。
「本当に毎日こんな混んでいる電車に乗っているんですか?」
「勿論だ、まずこれが仕事を始める前のリーマンの闘いだ」
深田にそう言われ、深田を男らしいとちょっと尊敬してしまった。

少しその窮屈な箱に慣れた時に紫苑は自分のお尻に人の手を感じた。
最初は混んでいるから、誰かの手が仕方なしに当たっているのかと思っていたが
その手は確実に撫で回すように動いている。
紫苑は身を捩って逃れようとするが、満員電車の中ではそれも限界があった。

さっきの駅で人に押され、二人と少し離れてしまっていた。
深田はまだお互いが話せる程度の距離に居るが広海は何処に居るか判らなかった。
その手は撫で回したり、時には少し力を込めてぎゅっと尻肉を握ったりする。
スーツを着ている自分を女と間違う筈も無い、それが判っても紫苑は『止めて』の一言が言えない。

そしてとうとうズボンの上から尻の窪みに沿うように指が動き始めた。
『あ!』視線の届く深田を見て目で困ったと合図を送るが深田はそのサインに全く気付いてくれなかった。

本当は紫苑が最初にもじもじし出した時に深田はその様子に気付いたのだったが
紫苑に気付かれずに紫苑の後ろに立っている広海に目で合図されていたのだった。
『全く広海の奴何考えてるんだか?』
そう思いながらも紫苑のSOSに気付かない振りを決め込んだのだった。

だが二人の予想を上回るような事態が起きていたことなど二人は全く気付いていなかった。
広海の悪戯している手以外にも前からも手が回されていたのだった。
紫苑は後ろからは尻を撫でられ、そして誰かもう一人が紫苑の太腿に手を伸ばして撫でている。
『やっ!・・・』
でも、もし不可抗力で自分の脚に手が当たっているだけかもしれないと考えると
止めてとは言えなかった。

『あと少しで到着する・・・あと1分の辛抱だ・・』心の中で早く駅に到着してくれと願っていた。
と、その時太腿を撫でていた手が紫苑のズボンの前を弄って来たのだった。
「止めて下さい」小さいがはっきり聞こえるような声を出した。
驚いたのは紫苑の後ろで尻を撫でて遊んでいた広海だった。
『ちゃんと止めてって言えるじゃん』広海はそう思うと、尻を撫でていた手を引っ込めた。

紫苑は後ろの手が離れた事でほっと安心したが、前を弄る手はまだ止めようとはしなかった。
「止めて下さい!」今度は少し強い口調で言ってみた。
紫苑のその言葉に慌てたのは紫苑の直ぐ後ろにいた広海だった。
『えっ!?本当の痴漢?』

広海がそう思った時に電車は降車駅のホームに滑り込んだ。
前に居る紫苑の体から強張りが解けたのが見て判った。
この駅ではかなりの人が降りる、押されるように3人ともホームに降り立った。

「紫苑大丈夫か?」深田が心配そうに聞くが紫苑は
「・・・だ・・大丈夫じゃありません」と悔しそうな、そして辛そうな顔をした。
そんな紫苑が可哀相になって深田が広海の肩をぽんと叩いた。
「ほら、お前が悪さなんかするからだ」
「え・・っ?」
「ご・ごめん僕、僕なんだよ紫苑君のお尻触って悪戯したのは」
「・・・酷い、広海さん酷い」
「本当にゴメン、でも止めてって言えたじゃない。でも僕が触ったのはお尻だけだから」
広海の言い訳に深田が首を傾げた。

「どういう意味?」と。
「紫苑君、本当の痴漢にあったでしょう?」
広海にズバリ言い当てられ紫苑は「あ・あんなのどうって事なんかありませんからっ!」
そう強がって改札に向かって急ぎ足で歩き出した。
そんな紫苑の後を心配そうな深田と広海が続いた。
二人は語らなかったが思う事は同じだった。
『やっぱ電車通勤は止めた方がいい・・』と。





最近忙しくて更新時間が乱れています。
すみません・・・
でも毎日更新は欠かさないように致しますので、見に来て下さいネ。


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COMMENT - 18

-  2010, 11. 17 [Wed] 02:31

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jun  2010, 11. 17 [Wed] 05:13

お早うございます。
紫苑、初の電車通勤、
でもやっぱり大変だった。
広海の悪戯、単なるいたずら?
本当に痴漢しようとしてたんじゃないかな。
でもそれとは別の、本当の痴漢に逢っちゃった。
紫苑やっぱり電車通勤はやめよう。
早く紫龍と仲直りしてね。、

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かや  2010, 11. 17 [Wed] 09:07

紫苑ちゃん、やっぱり痴漢に遭いましたね(><)
吊るしスーツ事件の店員といい、自分がそういう目に遭いやすい事を自覚して貰わないと。紫龍さんの心配はもっとも。
だけど、言い方が悪かったですね~。
紫苑ちゃんなら、私もイタズラしない自信ないわ(笑)←コラ!

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kai  2010, 11. 17 [Wed] 09:30

紫苑ちゃんがこんな目に会ったことを知ったら紫龍さんがどんなに心を痛めるか…
紫苑ちゃんの怒る気持ちもわかりけど、無菌室育ちの紫苑ちゃんには酷なことが世の中にはいっぱいあってそんなことから遠ざけたいと思っている紫龍さんの気持ちも、邪な心を持った上司が紫苑ちゃんを狙ってると邪推するのもわかって許してあげてほしいな

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けいったん  2010, 11. 17 [Wed] 09:31

痴漢が 痴漢を呼ぶ

↑らしいですよ。
痴漢の餌食になっていても 抗議の声も上げずに 大人しい気の弱い人には 一人、二人と痴漢を呼ぶらしいと聞いた事が あります。だから 最初に 手を出した広海が 本当の痴漢を 呼び寄せたんでしょうね。
広海、メッ(ー"ー)。紫苑、可哀相に~(yy)
こんな事があったと 紫龍が知ったら どうなるか!!

kikyouさま、お忙しい時は 無理をしないでね!私みたいに 風邪を引いたりしちゃうから。
これから 段々と寒さも厳しくなりますので どうか
お体を ご自愛されながら お過ごし下さいませ(^o^)ゞbyebye☆

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此花咲耶  2010, 11. 17 [Wed] 09:38

kikyouさま

ひとりでできるもんっ・・・思わず心配して、見守る保護者のような目になってしまいました。でも、直ぐ側に力になってくださる方達がいてよかったですねっ!・・・って、よくない~~、痴漢されちゃった。
きっと正面から見ると涙目で、強がっている気がします。意地を張っている紫苑くんと、きっと今自己嫌悪に苛まれているはずの紫龍さん、早く元に戻れますように。
紫苑くんなら、カウンセラー席で笑っていてくれたらもう大抵の人は癒されてしまって、それでもういいような気がします。

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jun  2010, 11. 17 [Wed] 20:05

かなしい・・・
キキョウさん僕のコメ無視してる。
コメないもの。
今日も僕はちゃんとコメしときました。

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紫猫  2010, 11. 17 [Wed] 20:29

ありゃりゃ、やっぱり痴漢にあってしまいましたか…
電車通勤はやめたほうがいいですね、ホントに
紫龍もそれを聞いたら怒るだろうに…
早く仲直りして欲しいですね、心配になってきます。

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kikyou  2010, 11. 17 [Wed] 20:36

junさま

> かなしい・・・
> キキョウさん僕のコメ無視してる。
> コメないもの。
> 今日も僕はちゃんとコメしときました。


ちょっとこれから晩御飯・・・・先にjunさまに

昨日の・・・ごめんなさい!!
お返事したので「えっ?」と思って今確認したら
タイトルにお名前を入れてなかったみたいで・・・ゴメンナサイ!!

昨日の一番下のがjunさま宛のお返事だったんです。
内容を見てもらえれば判ると思いますが「junさま」宛です(>_<)本当にごめんなさい!


今日のはまた後でコメントいれさせて頂きますネ。

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kikyou  2010, 11. 17 [Wed] 21:12

鍵コメ Yさま

こんばんは。

そ・その痴漢って同性異性?

ご主人を(笑)今度私にも経験させて下さいネ(笑)

さぁ痴漢の報告はどうなるんでしょうね?
ここは紫苑から折れるか?それとも紫龍が動くか?

お楽しみに~

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 17 [Wed] 21:15

junさま

こんばんは。

広海・・・違う意図があったんですがね、
まさか本当の痴漢にあうとは、計算外でしょう(笑)

朝の通勤ラッシュは私も以前に経験しましたが
本当に凄いんですよね、降りる駅で降りられなかった事も・・・・

junさんはそういう経験はないですか?

昨日のコメントでは失礼しました^^;

コメントいつもありがとうございます(●^o^●)

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kikyou  2010, 11. 17 [Wed] 21:18

かやさま

こんばんは。

寒いです^^;

紫苑無防備ですからね・・・やっぱ痴漢されちゃいました(#^.^#)

私は若い頃、痴漢しました!(笑)
ってか、ポールを掴んでいるのは友達だと思ってまして・・・
「あれ?マニキュアしてなかったっけ?」と指をスリスリ(*^_^*)

その手の主は高校生くらいの男子でした^^;


コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 17 [Wed] 21:20

kaiさま

こんばんは。

初めての電車通勤・・・悲惨な紫苑です。

この事を紫龍が知ったら!もう反抗は出来なくなりますよね^^

何度危ない目にあっても、痴漢にあっても紫苑も懲りないですが・・・

さて、どっちが折れるか・・これから考えます(>_<)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 17 [Wed] 21:23

けいったんさま

痴漢が痴漢を呼ぶ!
おお、そうなんですか。
つまり痴漢電車になるという?(そこまではならないか(+_+))

広海はちょっと違う意味で紫苑に悪戯したんですが・・
まさかこんな事になるとは!


寒いです!
私は図太いんですが・・娘が今日も風邪で休みです^^;
けいったんも風邪大丈夫ですか?
ぶり返さないように気をつけて下さいネ。

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 17 [Wed] 21:26

此花さま

こんばんは!

以前初めてのお買い物って感じで書いた記憶が・・・うっすらと(笑)

父に似てる・・・そんな沖田を変な目で見て欲しくなかった紫苑
あぁ痴漢に前を・・(>_<)


カウンセリング・・癒しの紫苑で頑張って欲しいです。
でもその前に紫龍を癒さなければ、大変です。

守られてるのか守っているのか?(笑)

コメントいつもありがとうございます。

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kikyou  2010, 11. 17 [Wed] 21:28

紫猫 さま

こんばんは。

はい・・・しっかりと痴漢にあってしまいました(笑)
それも前と後ろから・・・

朝から災難です紫苑。

紫龍には絶対言いたくないと思っているはずです^^


コメントありがとうございました(●^o^●)

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-  2010, 11. 17 [Wed] 23:29

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kikyou  2010, 11. 18 [Thu] 01:21

鍵コメ Yさま

おお!わざわざありがとうございます。

詳細が判ってすっきりしました!

ふむふむ( ..)φメモメモ

記載の痴女は・・・スルーって事で(笑)

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