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この世の果てで 45

 14, 2010 00:00
<記載が遅くなりましたが、最後に血ネタあります。
ごめんなさい、苦手な方はスルーして下さいませ>




瀬田はベッドの上でドアが静かに閉まる音を聞いた。
ドアが閉まると同時に拓海の心も閉じられてしまったような気がした。
拓海の心をこじ開ける言葉を瀬田は持っている、
だが今この言葉を使うと、
拓海が自分の所からいなくなってしまいそうで言えなかった。

「押しても駄目なら引いてみな、引いても駄目なら押してみな」
だがどっちも駄目な時はどうすればいいんだ・・・

そして翌日から瀬田は拓海に抱きつく事を止めた。
このまま拓海の体に触れ続けると、きっと抑えが効かない日が来る。
朝晩のハグが無くなったでけで、拓海と瀬田は穏やかな時を過ごして行った。


入社式も無事終わり、瀬田の一言で拓海は秘書課に配属された。
真新しいスーツが初々しい拓海を瀬田は口元を緩めて見守っていた。
拓海の日常は社会人になっても、そう変わる事は無かった。
家事も手馴れたものだったので、特にキツイと感じる事もない。

こんな穏やかな日が続く事が拓海にとっては幸せな事だった。
そして拓海が社会人になって一つ変わった事は
拓海の部屋にベッドが入った事だった。

「いつまでも一緒に寝てる訳にもいかないからな」
瀬田の言葉に「有難う御座います」と頭を下げながらも
拓海は心の何処かで寂しさも感じていた。

証券会社に勤めた新山とは、時々仕事の帰りに飲んでいた。
「研修大変じゃない?」新山に言われたが
「全然、凄く面白いよ」と拓海は答えた。

実際、秘書課は10人程の部署で、皆良い人だった。
拓海は狭山の下につき、色々教わっていたが
それでも、自分の会社の役員や管理職の名前と顔を覚えるだけじゃなく
主要取引先の顔や名前も覚えなくてはならないのは、少し大変だった。

会合やパーティで社長に恥をかかさないように、
秘書は全部を把握していなくてはならない。
名前と役職は直ぐに覚えられたが、なかなか顔と名前が一致しない。

「尾崎は将来社長秘書かぁ大変だな」
新山が拓海を心配するような事を言ったが
「まだ判らないよ、使えないと思ったら直ぐに交代させられるよ」
実際使い物にならなくて、他の部署に移動させられた人数は少なくはないらしい。

「社長が、ちょっと俺様な人だからな・・」
拓海が零すと
「だけど若いんだろう?」
「33歳だ」
「へえ凄いな、モテモテだろうな」

拓海が知る限り、女性の噂は聞いた事がなかった。
「それより、尾崎・・会社に可愛い子とか居る?」
「俺あまり他の部署と関わりないから、まだ判らないよ」
「ふーん、変なのに引っかかるなよ」
「大丈夫、誰も寄って来ないから」
笑って答える拓海を心配そうに新山が見ていた。


入社からひと月が過ぎようとしていた。
拓海もだいぶ仕事のコツが掴めてきたような気がする。
まだあまり重要な仕事の無い拓海は定時に上がれる。
「尾崎君、お疲れ様」
その言葉は入社してからずっと掛けられていた言葉だった。

「はい、お疲れ様でした。今日も有難う御座いました」
姿勢良く頭を下げる拓海を狭山は優しい顔で見ていた。
「気をつけてお帰りなさい」
まるで女子供に掛けるような言葉を毎日掛けられる。

珍しく、この時間に瀬田が社長室に居たらしい。
「あと30分くらいで俺も帰るから、待ってろ」
だけど拓海は『一介の新入社員がまさか社長と一緒に帰れる筈もない』と思い
「いえ、電車で帰りますから・・お先に失礼します」
改めて瀬田と狭山に向かってお辞儀をして部屋を後にした。

拓海がいなくなった社長室で
「振られましたね」と狭山に揶揄されたが
瀬田は椅子に凭れたまま、何も言わずに外の景色を眺めていた。


拓海が会社のエントランスを抜ける頃、何だか外が騒がしかった。

「え?浮浪者?」
「変な人がいるみたいよ・・」
「警備員さん何処行っちゃったの?」
などと女性社員たちが怯えたような顔で佇んでいた。

そんな声を聞きながら、拓海は足を止めずに歩き続けた。
まだ定時を過ぎたばかりだった。
エントランスに居るのは殆どが新入社員、それも女性社員が多かった。
警備員が席を外しているのなら、男の自分が何とかしなくてはならない。

だが拓海の足は、その不審者の3mほど手前で止まった。
「佐久間・・・・」
あの頃はまだ普通だった・・
だが拓海の目の前に居る男は、長い期間風呂にも入っていないのが
この距離からも判るほど、不衛生で痩せて濁った目をしていた。

あれから1年近く・・・
この男はどんな暮らしをしていたのだろう?
拓海は胸が苦しくなる思いで目の前の男を凝視していた。

「俺だって頑張ってみたんだよ・・・だけど借金は減らないし・・
もうどうしていいか判らないんだよ・・・もう死にたい・・・」
小声でブツブツ言う言葉は拓海にしか聞こえなかったかもしれない

「だから、お前も連れて行ってやるよ、家族の所に」

「えっ・・・?」
そう思った瞬間に拓海は腹に激痛を覚えた。
発作的に腹を押さえたが、赤くぬめりのある液が
その手の平から零れてポタポタとエントランスの床を汚した。

近くに居た数人の女性社員の悲鳴を拓海は遠くで聞いていた。
薄れいく意識の中、『社長・・』瀬田の顔が一瞬頭に浮かんだが
もう言葉にしてその名を言う事は無く崩れ落ちた。




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COMMENT - 16

夕華  2010, 10. 14 [Thu] 00:13

展開がっ!!

ちょー!!ここにきて展開がスピードアップ!?
最初、別々のベットで寝ちゃ駄目じゃんってコメしようとしたら
ラストはこんなことにっ!!

ベッド別々も駄目だけど、流血はもっと駄目~(涙)
この事件で二人の距離に変化は出るのかっ!?
更新待ちきれない~~~~

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お嬢  2010, 10. 14 [Thu] 09:03

わわわっ。

コメントは始めてですが。
ビックリなのでオープンコメにてお邪魔させて頂きます。
わわわっ・・・佐久間。何かしでかすかもと。危惧してましたが。
ココで出てくるんだ~逆恨みですねぇ。
立ち直れないのってほとんど自分のせいなのにぃ~
その上どうにこうにも手が引っ込んじゃってる瀬田社長。
急展開あわあわあわ~と思ってますが。
でも・・・そのまま意識が戻らないとか悲しい最後は
kikyouさんにはないと安心して(ぇ?ダメ?)
次の更新が待ち遠しいです。自分の更新より(苦笑)

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かや  2010, 10. 14 [Thu] 15:02

わーい、追いついた!
と思ったら、ひいぃぃ~!
刺された!わーん、一緒に帰れば良かったのに!(><)

名前言ったの、誰にも聞かれてないですか!?
大丈夫ですよね~??∑( ̄□ ̄;)

Edit | Reply | 

kai  2010, 10. 14 [Thu] 15:46

何の努力もせず周りのせいにして落ちて行ったあの佐久間ですね。
苦しみながら母親を守って父の痛みを感じ一生懸命に生きてきた拓海とは大違いです。
なのに、ここへきて拓海みさらなる悲劇が!?
社長さんも悔やむでしょうね、無理にでも待たせて一緒に帰るのだったと。

Edit | Reply | 

此花咲耶  2010, 10. 14 [Thu] 19:38

kikyouさま

わ~い、やっと追いつきました~!と思ったら・・・Σ!!(@△@)
何ですと~!?・・・↑かやさまと同じ意見でした。
佐久間も傷つけた分だけ、本当は自分も傷ついているといつか知るのでしょうね。これはもう犯罪だから、どうしようもないけどいつか自分のどうしようもない甘えに気が付くのでしょうか。
社長の血を噴くような後悔が、見えるようです。

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jun  2010, 10. 14 [Thu] 19:58

kikyouさん、こんばんわ
全部読みました。
でも前回でコメントしたほうが良かったみたい。
今日のは何で今佐久間がでてくるの、拓海がまた…
社長、早く来て拓海を救わなきゃ。

キキョウさんだからその辺り抜け目ないんでしょうね。
明日朝楽しみにしてます。

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-  2010, 10. 14 [Thu] 21:57

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

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kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:07

夕華さま

こんばんは。

はい、急展開です@@
別々のベッドを突っ込むどころじゃ無かったですね、スミマセン

この事件で二人の距離が・・・・
もう予約してありますので、もう少しお待ち下さいネ。

コメントありがとうございましたぁ!

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kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:09

お嬢さま

こんばんは。

あは・・自分の更新より楽しみと!ありがとうございます^^
思いもしない展開に思わずオープンで(笑)
これからもオープンで下さいね♪

大丈夫ですよ、基本ハピエンですので????
と怪しく引っ張ってみます(笑)

オープンコメありがとうございます!

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kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:11

かやさま

わーん、一緒に帰れば良かったのに・・・
本当ですよねぇ。
これが運命・・・哀しい運命かそれとも?

引っ張ってごめんなさい^^;

零時更新お待ち下さいネ。

コメントありがとうございました!

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kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:14

kai さま

こんばんは。

あの時こうすれば・・・
誰にでもよくある後悔ですよね。

一生懸命に生きてる拓海に幸せは訪れるのでしょうか?

あぁすみません・・引っ張ってますが、零時の更新です。
それ以上は引っ張りませんので(笑)

いつもコメントありがとうございます。

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kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:16

此花さま

こんばんは。

お!追いついて下さいましたか、ありがとうございます。
嬉しいです^^

と、此処で急展開です。

今回の事件は外せなかったんです~
でも長い引っ張りは私には無理なので^^
今夜を楽しみにして下されば嬉しいです。

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:18

jun さま

おはようございます(読まれるのが早朝でしょうから^^)

追いついて下さってありがとうございます。
一番の急展開の箇所でお預けになってしまいましたネ^^;

携帯から私も日中に試してみましたが、junさまも大丈夫だったみたいですね。
良かったです。

コメントいつもありがとうございます。

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kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:25

鍵コメ p さま

な・なんでこんなに詳しいんですか!
謎の方だわ・・・^^
色々教えて下さってありがとうございます。

コメは別に保存しましたので、あとでゆっくりと試してみます。

今夜の展開も早いかな?(笑)
何せ、まだ本格的なBLになってないし・・・

重要なコメントありがとうございました。
(お時間がある時にメールフォームから一度連絡頂ければ嬉しいです)

Edit | Reply | 

kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:35

拍手コメ 梨沙さま

今回は鍵ではなかったので、お名前書いてしまいました^^

やはり立ち直ってなかった佐久間俊一・・

こういうシーンは長く引っ張りたくないので
(じゃ書くな!って言われそうですが(笑))
今夜零時・・安心して下さいネ。
(ってネタバレじゃん!)

コメントありがとうございました!

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kikyou  2010, 10. 14 [Thu] 22:38

鍵拍手コメ Y さま

こんばんは、読んで下さってありがとうございます。

こちらこそ宜しくお願いします。
出来たら一度足跡を付けて下されば嬉しいです。
簡単リンクを覚えてしまったので、
嬉しくてポチポチとリンクしています♪

それと・・あっちもキャーッでお願いします^^

コメントありがとうございました。

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