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この世の果てで 40

 09, 2010 00:57
次の日風呂場での出来事を狭山に話すと
「信じられない・・」拓海と同じ言葉を吐かれた。
「何が・・・」
「社長、もう少し恋のテクニックを磨いた方がいいですよ」
「テクニック?」

狭山はそう言いながら、考えてみれば今までの瀬田に
テクニックもかけひきも必要なかったのだと気付いた。
学生時代から男にも女にもよくモテていた。
自分から口説く事などなかったのかもしれない。

常に誰か決まった相手がいて、そしてそれは定期的に変わっていた。
「社長・・本当の恋をした事がありますか?」
「おう、今してるぞ・・片思いだけどな」
「全くよい年をして・・」狭山は小さな声で呟いた。


その日以来瀬田が拓海と一緒に風呂に入る事は無くなった。
『押してばかりじゃ駄目だ』
という狭山のテクニックを伝授されていたのだ。
果たしてそれで成果があるかは瀬田にも判らなかったが
自分には今までに『恋のかけひき』という経験が無い。
だから狭山の言う事を素直に聞いていたのだった。

唯一譲れないのが朝晩のハグだった。
拓海の方もその度に自分が外国人になったような気になるが
逆に忙しくてハグされない日は何となく寂しい気になっていた。



そんな穏やかな日々が数ヶ月続いた・・・




3月になり、来月から社会人という頃
新山と一緒にスーツを買いに行った時に聞かれた。
「尾崎って住み込みでバイトしてるんだろう?」
瀬田のマンションで働いている事は言ってないが
住み込みで働いている事は教えてあった。

「いつ其処を出るんだ?」
突然の言葉に何を言われているのか拓海には判らなかった。
「はぁ?」
「だって社会人になったら、それ無理あるだろう?」
「え・・・・」

そんな事は1ミクロンも考えもしていなかった拓海は新山の言葉に驚いた。
「そんなビックリしなくても・・・まさか考えていなかったとか?まさかな?」
そうだ・・普通に考えれば、会社勤めしながらハウスキーパーのバイトなんて
無理もあるし、会社だってバイト禁止してるだろう。

「お・俺・・あそこ出なくっちゃならないんだな・・・」
漠然と思ったが、実感が全く湧かなかった。
「俺・・部屋探さなくっちゃならないんだ・・・」

「保証人が必要だろうから、その時は俺が親に頼んでやるから」
呆然としている拓海に新山がそんな声を掛けてくれた。
「新山・・・ありがとう、もし誰も当てが無かったら頼むかもしれない」
「ああ、今は家具付きの部屋もあるし、今度一緒に探してやろうか?」
「うん・・・・その時は宜しくな」

その時拓海は自分が布団すら持っていない事を思い出した。
結局ベッドは届かず、今だに瀬田のキングサイズのベッドの端で寝ている。
ハウスキーパーのバイトのお陰で、金を使う事はあまりなく
安い部屋を借りるくらいは何とかなるだろう。

拓海は自分が瀬田のマンションを出た後の瀬田を心配した。
飯の支度も・・風呂での背中流しも・・・
そこまで思ってから気付いた・・・
また新しいバイトを雇えば済む事に。

だから拓海があの部屋を出ても何日かは不便かもしれないが
瀬田には何の支障も無いだろうと。
そして新しい誰かが、瀬田のベッドで眠り、そして背中を流す。

「新山、俺今日は帰るよ」
力無く新山に言うと、「じゃちょっと待ってて」と
コンビニを探して店に入って行った。
コンビニから出て来た新山は手に雑誌を持っていた。

「ほらこれ、賃貸情報誌、後でゆっくり見てみな」と渡された。
「ありがとう・・じゃ」
新山と別れてひとり駅に向かった。
『何だか足に力が入らないや・・』

どうして自分がこんなにショックを受けるのか判らなかった。
割の良いバイトを辞めなくてはならない事?
自分で部屋を借りなくてはならない事?

それとも・・・それとも瀬田と・・違う!

頭に浮かんだ理由を拓海は打ち消した。
別に瀬田と離れる事が寂しいんじゃない・・・
そう自分に言い聞かせながら、マンションに辿り着いた。

リビングのソファにゆっくりと凭れ掛かり深い溜息をひとつ吐いた。
手にはさっき新山に貰った賃貸情報誌が握られている。
ぱらぱらと捲るが何も頭に入っては来なかった。

『俺・・変・・』

自分ではない誰かが瀬田の身の回りの世話をするかと思うと
何故だか、胸がきゅんと痛んだ。

『俺はただのハウスキーパーだ・・・』
自分の代わりなど掃いて捨てる程いるんだ。
そう思うと寂しくて寂しくて涙が出そうだった。





なるべく零時に更新しようと努力してるのですが・・・
最近ちょっと遅くなっています。
申し訳ないです^^


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COMMENT - 2

-  2010, 10. 09 [Sat] 01:14

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ぱせり  2010, 10. 09 [Sat] 02:02

Yさま

こんばんは。

そうですね・・・やっと自覚?

自覚する前の自覚?的な感じですね。

最近は零時更新が間に合わずに・・・
明日からは零時目指します!

コメントありがとうございました。

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