千里の充分に解された小さな蕾に譲二の逞しいペニスが押し付けられた。
「……ぁ」その熱を感じ千里が小さく慄き目をぎゅっと瞑った。
「千里、俺の顔をちゃんと見ていて」
「ん……」返事だけは小さく返すものの、千里はその瞳を開けようとはしない。
「千里、千里……俺は譲二だ、千夜じゃない。だからきちんと顔を見て」
譲二の言葉に驚いたように千里が目を見開いた。
「ジョージ……どうして?」
どうしてここで兄千夜の名前を出すのかと、千里は睨むように譲二を見上げた。
「好きだったんだろう?千夜の事を?」
「あ・兄貴だから好きに決まっている」
「それだけ?」
「……」
譲二に問い詰められて千里の言葉が詰まった。
自分は実の兄をそういう目で見ていたのだろうか?と自問自答してみる。
千里にとっては、4つ違いの千夜は誰にでも自慢できる素敵な兄だった。
「兄貴だから……」
それは譲二に言っているのか、自分に言い聞かせているのか千里には分からない。
自分が女性よりも男性に心が動かされる事を自覚したのは中学生の頃だった。
若いドクターを見てドキドキした事もあったが、一番心が揺れたのは兄の笑顔を見た時だった。
間違っている……何もかも間違っていると思っていたけど、兄が見舞いに来てくれる予定の日は朝から待ち遠しくて仕方なかった。
だから、無理を言っていると分かっていても、発売日に漫画本を強請ってしまう。
兄の全てが好きだと思った。ただそれが重傷のブラコンなのか、もっと違う感情なのかを知るには、千里はあまりにも子供過ぎたし非力だった。
「俺と千夜が溺れたらどっちに手を差し伸べる?」
意地悪な譲二が究極の選択を聞いてきた。
「……僕は……」
「その時は迷わずに千夜を助けろ」
譲二は真っ直ぐに千里の目を見てそんな言葉を吐いた。
「ジョージの馬鹿、僕はきっとジョージの手を取る」
千夜の手を取る人はいる……
速水と千夜の仲を気づいた時には、かなりショックを受けた千里だったが、今は心から祝福している。そう思えたのはきっと譲二の存在がもう心の中で兄よりも大きかった為だと思う。
兄とは正反対の譲二だが、だからこそ惹かれたのだと思う。
「千里……」
「ジョージ、僕の初恋は兄貴だったけど、今はジョージが大好き。愛している」
「千里、本当かい?」
「そんな事も分からないの?」
「いや、知っていたよ」
きっと譲二も心のどこかで不安に感じていたのだろうと思う。
「挿れるよ……」
「……うん」
千里が小さく頷くと、ゆっくりと熱く昂ぶった譲二の楔が打たれて行く。
「あぁ……」無意識な呻き声を聞き譲二が千里の髪を梳いた。
「大丈夫?」
「うん、だから続けて」
譲二が千里の体に負担が掛からないように体勢を整え、体を先に進めた。
千里は唇を噛んで、その瞬間をやり過ごそうとしている。
「ううっ……」
「千里、大きく息を吐いて」
譲二の言葉に合わせて、千里が肩で息をすると、その隙を突いて譲二の切っ先が胎内に埋められた。
今まで数多くの痛みや苦しみは経験してきたつもりだったが、初めて知る痛みの種類に千里は生理的な涙を零す。
千里の零した雫を譲二の熱い舌が舐めとって行く。
「ジョージ……ジョージ」
熱に浮かされたように譲二の名前を連呼する千里の胸を抱きしめるように、譲二は全てを埋め尽くした。
「あぁぁ……っ」言葉では言い表せない異物感と違和感に千里は悲鳴とも嬌声ともつかない声を漏らした。
「千里……大丈夫か?全部千里の中だ」
「カエルみたいな格好で……恥ずかしい」
千里は脚を大きく開いた自分の格好を譲二に見られていると思うと、恥ずかしくて脚を閉じたくなったが、それは譲二の体に遮られ無理な話だ。
「色々な千里をこれからも見てみたい……」
それは、別に千里に様々な体勢をさせようと言っている事では無いと、千里は充分に分かっていたが、恥ずかしくてつい「ジョージのエッチ」と言ってしまった。
一瞬目を見開いた譲二が口元を卑屈に緩め「そうだよ、俺はエッチだよ。覚悟するんだな千里」と言い内壁を擦りながら腰を引いた。
「あぁっ、ジョージ……」
その感触に千里は慌てて、譲二の腕に縋った。
それから何度も中の敏感な部分を擦られ千里は甘く喘ぎながら、意識を手放した。
(さようなら……お兄ちゃん)
兄から卒業して、僕は譲二と一緒に生きて行く。
兄弟の縁が切れる訳では無いが、千里は兄に感謝と別れを告げたかった。
あれから1年―――
事務長の片腕となった千夜は、若い看護師の熱い視線を微笑みでかわし速水と肩を並べて、院内を歩く。
「いよいよ今日だな」
速水の言葉に、千夜の身が引き締まり顔に緊張が走った。
そんな千夜を横目で眺め速水は小さな溜め息を吐く。
病院の出入り口で千里と譲二が立ち話をしている姿が目に入った。
千里は真っ直ぐに歩いてくる千夜を見詰めている。
「千里……今見惚れていただろう?」
譲二が千里の耳元で揶揄するように囁いた。
「もう、譲二は相変わらずなんだから」その声は譲二にだけ判る甘いものだった。
「院長、兄さん!」
「千里……おめでとう」
今日は、千里が通っていた栄養士の専門学校の卒業式だった。
そして千里は管理栄養士を目指し速水の病院で、働く事になっている。
千夜の目に映った千里は、もうあの頃のひ弱な少年ではなく、強い意志と希望を持った立派な青年だった。
少年の千里を支えたのは自分だったが、青年の千里を支えてここまで導いてくれたのは、横に立つ譲二だ。
千夜は、譲二に改めて感謝の言葉を述べた。
「千里、来月から同僚だ……宜しく」
兄千夜が差し出した手を取らずに、千里はその胸に飛び込んだ。
「ありがとう、兄さん。全部兄さんのお陰だよ。僕頑張って院長にも兄さんにも恩返しするから待っていて」
この日は千夜と千里にとって、本当の意味での卒業だった。
「相変わらずお前らは……」
そう言って速水と譲二が二人を引き離した。
だがその顔はとても優しく、それぞれのパートナーを愛しむ目で見ていた。
二人の悲願の花が今、咲いた―――
真っ直ぐ上を向き咲く凛とした花は、2輪並んで綺麗に咲いていた。
過去より辛い未来は無いと、二人は信じて笑顔で生きていくことだろう。
―――悲願花<完結>―――
日本ブログ村とFC2のランキングに参加しています。
ポチっと押して下されば嬉しいです(*^_^*)
にほんブログ村
- 関連記事
-