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悲願花 6

 11, 2011 00:00
「剛は大丈夫だ」30分程して速水がそう言いながら部屋に戻って来た。
「今夜はどうするんですか?ここに泊まります?」
「いや、自宅に帰る。その方がゆっくり眠れるからな……」
その言葉に千夜は、剛の容体が落ち着いている事を再認識して安堵の吐息を吐いた。
「さあ、帰るぞ」
「はい、シロさんに聞いてくれましたか?」
「ああ、明日でいい」
「そうですか」

「千夜は何処に帰る?」
「俺はもう、今夜は帰れないと連絡しました」
速水の弱い部分を見せられて、それでも自分の部屋に帰りたいとは言えなかった。
「そうか」珍しく嬉しそうな顔を千夜に見せる速水に、自分の選択は間違っていなかったと思った。

「飯食って帰るぞ」ご機嫌な声の速水に苦笑しながら千夜は、速水の後に続いて院長室を後にした。
途中和食の美味い店で夕飯を済ませ、千夜は速水と一緒に速水のマンションに着いた。

「風呂どうしますか?」
病院で簡単にシャワーを浴びただけの速水に声を掛ける。
「一緒に入るか?」
「……いいですよ。じゃ支度して来ます」
あっさりと承諾する千夜に速水は少々意外な顔を見せるが、千夜はそのまま浴室に消えた。

風呂は通いのお手伝いさんが綺麗に掃除を済ませてくれている。
千夜は湯を溜めるだけで良かったのだが、浴槽の縁に腰を下ろし溜まる様子を見ていた。
浴槽に満たされるまで、じっと水面を眺めていた。
しばらくして速水を呼びにリビングに戻ると、ソファにもたれ掛かり軽い寝息をたてている速水を見た。

余程疲れているのだろう、起すのも忍びない気がしたが、きちんとベッドで寝て欲しかったから、肩に手を掛けてそっと呼びかけた。
「爽輔……」
その頬をそっと指で撫でた。
今更自分はこの男と別れる事など出来ない……
だけど、未来は無い……

「千夜……」瞼を閉じたままの速水に名前を呼ばれ、千夜は指を離した。
「俺から離れて行くなよ」
何故か今日の速水は、弱気な発言が多いような気がする。
きっと千夜の心の奥底にある不安が速水にそんな事を言わせているのかもしれない。

千里と譲二の事を徹底的に反対するとすれば、千夜も速水と別れなければならない。
速水との切欠を千里に知られてはならない。
「男同士の何が悪い?」
「……未来がありません」
「どうすればお前の全てが手に入る?」
「俺の全てなんか、もうとっくに手に入れているじゃありませんか?」
千夜は、一生掛かっても返せない借金を速水にしているのだ。

「風呂に入って来る」速水は急に立ち上り、浴室へと行ってしまった。
迷った挙句5分程時間をおいて、千夜も浴室に入った。
千夜が入って来た事に少し驚いた顔を見せた速水だったが、黙って広い浴槽に浸かっていた。
シャワーで簡単に体を洗い、千夜は二人で入っても余裕のある浴槽に体を沈めた。

「千夜、こっちへ来い」
速水に導かれ千夜はその腿に跨るように座った。
正面から抱き合う体勢で千夜は、速水の顔を見詰めた。

速水の手が後頭部に触れ、千夜の顔を引き寄せる。
重なった唇は直ぐに開かされ、速水の蠢く舌を受け入れる。
速水の色に染められ開発された体が反応を示すには、時間は掛からなかった。
速水の体も同じように反応している事が、逆に恥ずかしかった。

「千夜……」
浴室で聞く声は、千夜の鼓膜に心地良い響きを与えてくれる。
「爽輔……」
「抱いてもいいか?」
許可を求める癖は出会った頃から変わらない。
「ここで?」
「ああ、今直ぐに抱きたい」
「逆上せるから……」

速水の指が背中に回り、背骨の形を確認するかのようになぞって行く。
「あ……」
背中にも千夜の性感帯が隠されている。
背中を反らせる事で、速水とより一層体が密着してしまい千夜は慌てて身を引いた。
「2年半も抱いているのにまだ慣れないのか?」
速水がまた淋しそうな顔を見せる。

「いや、ただ恥ずかしいだけだから」
千夜の背中をなぞっていた指が、狭間に降りた。
「あ……っ」
その指が奥を目指しているのが分かって、今さらながら腿を跨いで座った事が失敗だと気づいた。
速水の指は簡単に開いた孔を探し当て、撫で回す。

「あぁ……」
ぞくりとする感触に湯の中でさえ体が粟立つ。
入口を解すように、そっと動く指先に嫌悪も不安もなく、待ちわびているような気がした。
「やはりベッドに行くか?」
速水の言葉に千夜も濡れた目で頷いた。
(俺は駄目だ……この人が好きだ)
自分こそ、失うのが怖いんだ。

千夜と別れても速水は何も困らないと思った。
速水の地位と経済力をすれば、新しい相手など直ぐに見つかるだろう。
惨めに捨てられるのは自分だ……

「早く……ベッドに行きたい」
「珍しく積極的だな」速水が少し余裕を見せて揶揄する。
今は、千里の事も将来の事も何も考えないで、快楽に身を任せたい。

その夜今までで一番乱れたかもしれない自分の痴態を、千夜は速水に見せてしまった。




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