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お見舞いSS 「桜咲く」前編

 16, 2011 19:37
◇はじめに◇

今回の地震の被害は未だに落ち着く事なく、被災された方もとても苦しい思いをされていると思います。(私にできること・・)節電も頑張っています、微々たるものですが募金も致しました。

被災された方も、余震が続く地域の方も(私を含めて)全く落ち着かない日々が続いていると思います。でも、今は無理でも環境が少し整い、精神的にも現実逃避したいと思われた時、趣味のBLをちょっと読みたいと思われた時に、1分でも2分でも妄想の世界にご招待出来たらいいな、と思って更新させて頂きました。

「更新ありがとうございます」と言うコメントをよく頂いておりました。
とても嬉しいお言葉です。今は、読んで下さりありがとうございます、と私は言わせてもらいます。

私の方も落ち着かない日々が続いておりますので毎日の更新は無理かもしれませんが、私に出来る事を私なりに見つけていきたいと思っております。

不幸にも震災で帰らぬ人となった方々のご冥福を心からお祈り致します。
そして1日でも早くに穏やかな日々を取り戻される事を心から願っております。





この話は、「僕の背に口付けを」の同人誌に載せました「桜咲く」の紫苑バージョンです。
「僕の背に・・」の2回目の校正で、改行を詰め6頁空きました所に書いた短い話です。
千尋バージョンは同人誌でしか読めませんが、今回喜んでもらえる物をと考え、紫苑バージョンを書きました。
タイトルはこの時期に相応しくありませんが、お許し下さい。
少しでも不快に思われる方は、閉じるか、または後日お読み下さいね。

前半3000文字、後半4000文字のお話になります。
後半は日付が変わり準備が整いましたらアップいたします^^






「いったい何時から起きているんだ・・?」
呆れたような声が背後からかかり振り向くと、流石に今朝は早起きしたのだろう紫龍が、
パジャマのまま立っていた。
「おはようございます」天使は、やり遂げ充実した顔を見せて微笑んだ。

「おはよう、紫苑・・それにしても凄いなぁ・・・」
「だって8人でしょう?これくらいないと足りないから」
「イヤあいつ等だって自分の分の弁当くらい作っ・・・・・て来ないか?」
「僕は大丈夫だよ、皆が喜んでくれるのなら嬉しいから」
紫苑はそう言いながら、3段重を2つ風呂敷で包み、更に果物が入っているらしい容器も2つ用意した。

「それにしても、よくこんな・・・」まだ納得しない顔の紫龍に向かって
「早く顔洗ってきて」と紫苑は紫龍をキッチンから追い出した。
1週間前に紫龍から「伊豆に花見に行くぞ」と言われ、紫苑は今日の日をとても楽しみにしていた。
2日前から食材を用意したり仕込みをしたりして、大忙しの紫苑を文句言いながらも紫龍は優しい目で見ていた。

「大勢で花見なんて行った事がない!」と紫苑は喜んでいる。
亡くなった紫苑の祖母なら風情を楽しみそうだが?と思ったが
「お祖母様の家には庭に桜の木がありましたから、桜の時期は毎日がお花見でした・・」

きっと紫苑は心静かに縁側に腰を下ろし桜の花を眺めていたのであろう。
幸せそうな風景ではあるが、若い紫苑には物足りないものがあったのかもしれない。
「お祖母様の大好きな花でしたから」
今は無い家と居ない祖母を偲んでいる紫苑をぎゅっと抱きしめて「思いっきり楽しもうな」と言うと紫苑は嬉しそうな顔で頷いた。

そしてクロワッサンと珈琲の洋風の朝食をしっかり済ませた頃に玄関のチャイムが鳴った。
「紫苑君準備出来た?」インターフォンから聞こえるのは広海の声だ。
紫苑が玄関に迎えに行くと、そこには軽装に旅行バッグを持った深田と広海が立っていた。
「おはようございます、お二人とも早いですね」
「おはよう、うん紫苑君の珈琲飲んでから出かけようかな?って思って」

「おい、お前ら図々しいぞ、弁当はどうした?弁当は!」
紫龍は不機嫌に言うが部屋に上り込んだ二人は紫龍の顔を見るより先にテーブルの上に置かれた重箱に目が行ったみたいだった。
「わお、凄いこれ紫苑君が作ったの?」と広海は歓喜の声を上げるが
「社長、おはようございます。今日はお招きありがとうございます。」
親戚の広海と違って深田は勤務先の社長である紫龍を無視する事も出来ずに、先に礼を述べた。

「ああ、お前らもついでに楽しめ」
「ついでですか・・」深田は苦笑するが「ついででもいいじゃない圭、温泉に1泊出来るんだから、そういうついでも大好き」と広海は物怖じもせずにそんな事を言っている。

殆ど寝ていないだろう紫苑は二人の為にせっせと珈琲を淹れている。
遠足前の子供のように興奮している様子がよく判り、紫龍は目を細めた。
興奮するのなら夜に・・・と思わないわけでは無いが、紫苑が喜ぶのなら何でもしようと紫龍は思った。

二人の前にカップが置かれた頃に、今度はエントランスからの呼び出し音がした。
「あっ、賢介さんだ」立ち上がる紫苑に「悪徳弁護士も紫苑の珈琲狙いか?」などと予定よりも早い到着に悪態を吐いた。

結局それから30分後に南條が借りてきたワンボックスカーに重箱や飲み物を積み込んで、2台に分かれ一行は一路伊豆に向かった。
「ねぇあと二人は?」
「あいつ等は現地集合だ」
「そう、楽しみだなぁ、紫龍の大学の後輩なんでしょう?どんな人?」
「ああ、着いてからの楽しみだ、あいつの職業当てられたら何でも言う事聞いてやるぞ」
「本当に?」
「約束するよ、その代わり当てられなかったら俺の言う事を何でも聞くんだぞ」

その言葉を聞いた後部座席の二人が顔を合わせてニヤッと笑った。
「紫苑、今のうちに車の中で寝ていた方が良さそうだぞ」と深田に言われ紫苑は意味判らなそうな顔をしていたが、早起きが祟ったのかいつの間にか静かに寝息を立てていた。

「紫苑君寝ちゃった?」広海が小声で囁くと「ああ、殆ど寝てないから騒ぐなよ」と紫龍に釘を刺される。「判っているよ、あんなに沢山のお弁当作ってくれたんだもん」
「ああそうだ、それに初めての花見で興奮していたし・・」
「・・・僕も初めてだ」
ここにも一人辛い青春時代を送った青年がいた・・・
「お前らも本気で楽しめ」としか紫龍は言いようがなかった。

それから3人は少々の声では起きそうもない紫苑の様子を見ながらも、楽しく話しながら目的地に到着した。
「紫苑、朝だぞ・・」
「うう・・ん?・・おはよう・・」
「おはようのキスは?」
「・・おはよう紫龍」そう言って紫龍の首に腕を絡めた時に、自分がシートベルトに固定されているのに気付き紫苑は、真っ赤な顔をして怒った。

でもどんな悪戯でも皆の顔から笑顔が消える事はない楽しい旅行だった。
「あ、お弁当大丈夫かな」そう言うと紫苑は車から降り、先に到着している南條の車に向かった。
「ほら、お前らはシート敷いて来いよ」
「はい」深田と広海も肩を並べて荷物を積み込んである南條の車に急いだ。

「でも、こんな時間でいい場所が取れるのか?」深田が言うと
「何でもこっちの知り合いに場所取りは頼んでいるらしいよ」と広海は答えた。
「え、マジ?」まぁ堂本ほどの人脈があればそれも可能だろうと、深田は思いながら南條の車まで行き、再び驚いた。
「あの、花見って普通ビニールシートじゃないんですか?」
「そうか?」ここにも少々麻痺している奴がいると思ったが口には出さない深田だった。

深田と広海はビニールシートと畳まれたカーペット、クッション、ブランケットなどを抱えて予約してある場所を探した。
「堂本様ご一行」と書かれた幕を持った男は旅館の半被を羽織っていた。
「あぁそういう事ね」深田は今夜宿泊する予定の旅館がどれだけ堂本を上客として扱っているか判って苦笑した。

紫苑が車の所で待っていると、黒いベンツが紫龍のジャガーの横に並んで停まった。
「やっと到着か」独り言のように紫龍が呟いた。
このベンツに乗っているのが今日の花見の残りのメンバー2人らしい。
紫龍の後輩に会う事など紫苑にとって初めてだ、ちょっとドキドキして待っていた。

車から降りたのは、紫龍と同じくらいのすらっとした男性と、もっと若い青年だった。
『うわっ美人・・』漆黒の髪と黒い瞳の青年は憂いある雰囲気の綺麗な青年だ。
少し戸惑っている青年に紫苑は声を掛けた。
「こんにちは、僕堂本紫苑です」
「こんにちは・・斉藤千尋です」

そして色々話をすると、二人ともこんな花見は初めてと知り、急に親近感を覚えた。
席が変わり桜の下に座ってからも沢山話をした。
紫苑の作った弁当と千尋の友達が作ったという弁当を食べながら、お互いに「美味しい」と顔を見合わせた。

そんな中、千尋のパートナーが少し酔って膝枕で眠り、そして紫苑も車の中で眠っただけでは足りなかったのか睡魔が襲ってきて、クッションを抱えていつの間にか眠ってしまった。

『紫苑・・・紫苑、楽しんでいますか?』
『お・・お祖母様?』
『ここの桜はとても綺麗ですね』
『お祖母様もご覧になってらっしゃるのですか?桜を・・』
『ええ、私は貴方が楽しんでいるのが何よりも嬉しいですよ・・』
そう言ってとても幸せそうな顔をして祖母は微笑んでいた。


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コメントのお返事が遅れております、すみません。
書く方を優先させてもらいました。


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COMMENT - 1

kikyou  2011, 03. 17 [Thu] 08:52

拍手鍵コメ て・・さま

こんにちは。

関西とはいえ何ごとも無く良かったです。

自分のできる事と考えると、やはり少しでも書く事だなぁと思いました。
読んで下さり本当にありがとうございます。
躊躇いながらの更新ではありましたが、これで頑張って書いて行けると思います。

コメントありがとうございました。

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