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1周年記念 「彼方から・・・」13

 24, 2011 00:00
秀人は浴槽に浸かりながら今日の自分を省みてみた。
今まではあんなに蓮のことを避けていたのに・・思うだけで苦しかったのに、どうしてここで自分は風呂なんかに入っているのだろう?そう考えていた。
だけど今の秀人は背中に受けた唇の熱さにまともに考えられないような状況にもあった。
自分ですら忘れていたような背中の傷痕を直ぐに気付いた蓮を不思議に思った。

背中に受けた熱のせいで、秀人の身体は潤んでしまっている。
「参ったな・・」同世代の男性に比べたら秀人の性欲は微々たるものだ、と自分では思っていた。
高校時代も大学に入ってからも、下ネタ的な話題は色々な場所で持ち上がっていた。
そういう話題を避けるのも周囲をシラケさせてしまうから、適当に相槌をつきながら秀人も参加はしていた。
隆弘に言わせたら「秀人は奥手だからな・・・」らしいが、奥手というのと興味が薄いのは少し違うような気がしていたのを思い出した。

「秀人君、そろそろ上がったら?」
急に扉の向こうから蓮に声を掛けられて水面が揺れた・・・
「は・はい・・」
「ピザ届いたよ、冷める前に食べよう。着替えはここに置いておくからね」
「はい、もう出ます」
秀人は、たわいも無い会話にも心が震えてしまった。

まともに会って会話をしたのは今日が初めてなのに・・もしかして好きになった?
自問自答するが答えなど見つからなかった。
秀人は「好き」という感覚をまだ知らなかった。
両親も隆弘も好きだけど、違う種類のもののような気がした。
兼介は?・・・自分を好きだと言った兼介への好きはどんなものだろう?
キスして抱き締めたいと言った兼介を不思議に思った。
だからキスされても嫌悪感もなければ、嬉しいとも思わなかったのだ。

風呂から上がり、蓮の服を着てリビングに戻った。
「いい匂い・・・お腹空いてきちゃった」
チーズの香りが秀人の食欲を急激にそそった。
「ほら、ここに座って」
秀人はリビングのローテーブルの前、蓮の正面に座った。

改めて蓮の顔をじっくりと見ると、その端正さに秀人は驚いた。
「蓮さんって・・・綺麗ですね」何の考えも無くついそんな言葉が口から飛び出し自分で驚いた。
「ありがとう、でも秀人君の方が綺麗だよ」
蓮が優しそうな顔でそう言ったので、秀人は恥ずかしくなり俯いてしまった。

「秀人君、顔をちゃんと見せて、君の顔をずっと見ていたい・・・」
言ってはならない言葉だったのかもしれないが、蓮は言わずにはいられなかった。
恥ずかしそうに俯く秀人を本当は抱き締めたかった。

お互いに色々な気持ちを胸に秘めながら簡単な食事が終わり、秀人はまた本棚の前に座り込んだ。
「全く・・本の虫って秀人君みたいなのを言うんだな」
蓮は笑いながら「風呂入ってくる」と部屋を出て行った。
蓮がいなくなった部屋は薄ら寒かった。
秀人は消えた温もりを取り戻すように、さっき抱くように読んでいた書物に手を伸ばした。

「あぁ・・・」知らず知らずのうちに吐息が零れ、胸が熱くなってしまう。
『特別だ・・』この書物は他の本と違い自分にとって特別な物だと気付いた。

『懐かしい』秀人は自分の気持ちに驚愕してしまった。
どうして懐かしいなどという感情が生まれてきたのか判らなく戸惑った。
震える指で、今度は自分で頁を丁寧に捲ってみた。
何かが頭の中で弾けるという感覚を生まれて初めて知った。
その余白に書き込まれた字を見て『これは僕が書いた』と感じた。

そう感じながら頁を捲って行くと、自分の字ではない字が所々書かれているのに気付いた。
「誰?」普通なら後からこれを手にした人が書き込んだかもしれないと思うかもしれないが、秀人は違った。
自分の横に誰かが居たのだ・・と感じた。
『誰?』

「また本を読んでるの?」風呂上りの蓮はさっぱりしたような顔で呆れたように秀人に話しかけた。
「あ・・はい」
今感じた事を秀人は蓮に話さなかった。
こんな事を人に話したら笑われるだけだと思った。
頭がおかしい子だと蓮に思われたくはなかった。

「そろそろ寝ようか?同じベッドでいい?」
「はい」何の躊躇いもなく返事をするのは、自分をそういう意味で意識していないのだと蓮は少し寂しく思った。
「秀人君って結構無防備だね?俺と同じベッドでいいの?」
「は・はい・・どうして?」
「男同士だって性の対象になるんだよ?」蓮は揶揄するように肩を竦めながらそんな事を言った。

「あはっ、まさか・・あっ」
秀人は忘れかけていた兼介の告白とキスを思い出し、思わず唇に指を当てた。
「へぇ?もしかして男の人とキスしたことある?」
「あ・・この前、友達の兄貴が・・・・」
秀人は自分の口からキスされたとは、何だか恥ずかしくて言えなかった。
「キスだけ?」蓮の目が妖しく光っている事に秀人は気付いてはいなかった。

「はい、キスだけです。でも一度だけだから・・・」
秀人は何故か蓮に対して言い訳をしてしまう。
「俺ともキスできる?」とんでもない質問に秀人は驚いて蓮を見上げた。
「えっ・・あ・・」思うように言葉が出ではこなくてもどかしかった。

すると秀人の横に腰を下ろした蓮が秀人の肩に手を置いた。
秀人が抵抗する間も無く、蓮の唇が重ねられる。
「あ・・・っ!」
『熱い・・』その瞬間に秀人の身体に電流が走り、意識は真っ白い雲の上のような所を彷徨っているような感じがした。

兼介とのキスは軽いものだったが、蓮のキスは容赦しないといったような熱いものだった。
本当はただ合わせるだけのキスだったのに、その時の秀人はとてつもなく熱を感じていた。
身体のあっちこっちで、何かが弾け暴れまわる。
感覚と感触、意識と無意識が激しく交差する中、秀人は自分の頬の冷たさに自分が泣いている事を気付いた。

『止まらない・・』
唇を離そうとする蓮の背中に秀人は自分から腕を回して縋りつくように、その唇に吸い付いた。
この唇を離したら失くしてしまう・・・そんな焦燥感が秀人の胸を苦しくさせていた。

こんな激しいキスなど生まれて20年した事などなかった。
それも自分から縋るようなキスだ。
『こんな自分なんか知らない・・』
秀人は自分の中に知らない淫らな何かが棲んでいるような気がして、怖くて余計にその唇から離れる事が出来なかった。

蓮に両肩を掴まれ、その胸から剥がされた。
「いやっ」
「しゅう・・・」
優しく名前を呼び、その唇はもう一度秀人の唇を塞ぐ。
その熱さに秀人は安心したように身を任せた。

『こんなの自分じゃない・・・』
会って間もない男の胸に縋り、口付けを強請るようにしている自分は本当の自分じゃない・・秀人はそう否定しながらも、この胸の温もりから逃れられないでいたのだった。

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今日の更新は普段よりちょっと長めに出来ました^^
コメントのお返事遅くなってて申し訳ございません。

◆現在「僕の背に口付けを」の修正を頑張っています。
3月21日のJ庭で同人誌を出す予定です。
まだ詳しい事は決まっていませんので、追ってご案内致します。

pio様に表紙描いて頂きました。
もう眺めているだけで、本になったような気がしてニヤニヤしてしまってます。

凄く素敵です!私も頑張らなくてはなりません。
ニヤニヤしてても形にはなりませんから(笑)


画像が大きいのでサムネイルでの表示です。
クリックで大きくなります(*^_^*)

2011-3-21-chihiro.jpg



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COMMENT - 10

梨沙  2011, 02. 24 [Thu] 01:00

(〃∇〃) てれっ☆

もう いやー゚。(*^▽^*)ゞって感じ~
何々この雰囲気わ!! こちらまで照れてしまいます(^^;;
こんな雰囲気だからでしょうか? 秀人もだいぶ傾いていますね(゚ー゚☆キラッ 
でも この先波乱があるのでしょうか( ̄ー ̄; ヒヤリ
「僕の~」のオフセット本が出る様です(^.^) 楽しみです☆彡

Edit | Reply | 

kikyou  2011, 02. 24 [Thu] 01:20

梨沙さま  (〃∇〃) てれっ☆

こんばんは。

早いコメントありがとうございます(*^_^*)

秀人も自分が判らないまま、感情だけで行動してますねぇ。
さてこの行為は何処までいってしまうのでしょうか?

「僕の背・・」頑張って修正していますが
沢山ありすぎて、予想以上に時間がかかってしまってます^^;
間に合うのかっ!って感じもありますが、
とにかく頑張ります!

コメントいつもありがとうございます!

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-  2011, 02. 24 [Thu] 14:29

管理人のみ閲覧できます

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けいったん  2011, 02. 24 [Thu] 14:37

クリックで 大きくならないよ~(T▽T)

pioさまの絵を ドアップで見たかったのに~私のPCだけなの?
kikyouさま、「僕の背」を 同人誌にされるのですか! 本は置く(隠す)場所が無いので 買えませんが、応援だけはさせて下さいね。

自身の思ってもみない言動に躊躇う秀人
蓮の優しさと 安心出来る温もりに委ねようとする秀人...

あと 少しだよ~、蓮!(d゚ω゚d)オゥイェー♪
紅蓮様ぁーー(*´ェ`*)っ゚+。☆愛☆。+゚...byebye☆

Edit | Reply | 

ちこ  2011, 02. 24 [Thu] 15:49

秀人くんに早く思い出してほしいような・・・上様にもチャンスを与えてほしいような・・・隆弘頑張れ~って気持ちもあるし、幼なじみなのにもっていかれるの~?隆弘可哀想・・・複雑(;´∩`)
蓮さん、秀人くんが違う人とキスしたことあるって聞いて嫉妬しちゃいましたか~(*/ω\*)
奪い尽くすようなキス!
キャッ(//∀//)
この後はどうなさるんでしょ~かっ、当然・・・
手を繋いでネンネします(*^□^*)
「僕の背~」欲しいです~ヽ(´▽`)/
通販もぜひお願いしますね~!
えっ、めんどくさいから(〇>_<)ヤダ~~~なんて、言わないでくださいね、ねっ!?

表紙綺麗ですね~モノトーンで「僕の背~」の世界観をビシッと表現されてて(≧▼≦)
大きな絵で見ようと思ったら、なぜかパソコン起動出来なくてさっきからパソコンをいじってます(涙)
でっかい表紙絵みたいのに~~~゜。(p>∧<q)。゜゜エーン
叩いたら、起動するかな・・・
では、また・・・

Edit | Reply | 

kikyou  2011, 02. 24 [Thu] 23:20

鍵コメ Tさま わぁ~

こんばんは。

素敵ですよねぇ表紙v-344
「天使が啼いた夜」も出来上がっているんですよ^^
後日紹介しますネ。

関西でしたか!通販も考えてはいるのですが
まだ形にならない事には先に進めなくて・・・

こちらの話も急展開で進んできました。
もうどうなってしまうんでしょう?と我ながら思っています。
ちゃんと覚醒するのか、それとも?
まだまだ進む道が決まっていないのですよ^^;

どうなるか楽しみにしてて下されば頑張り甲斐もあります(*^_^*)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 02. 24 [Thu] 23:23

けいったんさま  クリックで 大きくならないよ~(T▽T)

こんばんは。

私も見れない時があった!
でも今は見れます。まだ見れないでしょうか?
もし見れない時には、何か手をうちますネ。

後日「天使・・」もアップします。
綺麗ですよぉ(#^.^#)

本の隠し場所悩んでいる方は大勢いますネ。
匂いだけ楽しんで下さいネ。

蓮!頑張ってますよぉ(笑)
川の流れに身を任せ・・・
このあとどうなってしまうのか楽しみにしてて下さいネ。

コメントいつもありがとうございます(*^_^*)

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kikyou  2011, 02. 24 [Thu] 23:32

ちこさま

こんばんは。

エチしたからといって、思い出さないかもしれないし・・・
そしてそこから新しい苦悩も始まりそうだし^^;
どうなるか、楽しみにしててくださいネ。

「僕の背・・」表紙綺麗ですよねぇ。
千尋も光輝もpioさんのイラストのイメージのまま話が進んでいるので
その集大成ですよね^^

あ、大きい画像まだ見れないでしょうか?
う~ん、けいったんも見れないって(>_<)
あ!叩いても起動しないからネ~

まだ見れないような時には何か違う方法も考えます。

>えっ、めんどくさいから(〇>_<)ヤダ~~~なんて、言わないでくださいね、ねっ!?

はっ!!私の性格把握されてる?(笑)

色々まとまったら又ご案内します。
まだ何ページになるかも判らないような状態です、ゴメンナサイ。

では、コメントありがとうございました(*^_^*)

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-  2011, 02. 25 [Fri] 08:40

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kikyou  2011, 02. 25 [Fri] 22:22

鍵コメ 8さま

こんばんはー。

あはは・・・同人誌出してみようかな?って^^;
でも、まぁ・・自己満足と自己顕示欲の賜物ですから(*^_^*)

pioさんのイラスト素敵ですよねぇ。
私の中でも、読み手様の中でも千尋はあの顔!ですからネ。
あとは、頑張って修正して形にする!!頑張ります^^

通販!!欲しいと言って下さる方がいらっしゃいましたら
もうお届けに上がります(笑)

機会があれば読んで下されば私も嬉しいです。
コメントありがとうございました。

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