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1周年記念 「彼方から・・・」10

 21, 2011 00:00
「えっ?あ・・っ」
唇を掠められ秀人が驚いて顔を上げると今度はちゅっと啄ばむようなキスが落とされた。
「兼にぃ・・・」
「驚いた?好きだよ秀人」
突然のキスと告白に秀人もどうしていいか分からなくて返事も出来ない。

暫しの沈黙を破ったのはカウンターの内側にいるバーテンだった。
ことっと新しいしグラスを置きながら「社長・・・やり過ぎですよ」と声を掛けた。
「社長?」誰にでもそう呼ぶのだろうか?
「あ・・実はこの店俺が経営してるんだ。」
「だって兼にぃは会社に勤めてるし、おじさんの跡継ぐんじゃ?」
「そうだけど、こういう息抜きの場所も必要なんだよ」
「ふ~ん?」

「でもここに秀人ひとりで来たら駄目だよ、危ないから」
秀人は自分の経営する店を危ないという兼介の言葉をあまり理解出来なかった。
不可解な顔をしている秀人に向かって
「ええっとね・・」どういう風に説明したらいいのか兼介は言葉を選んでいるようだった。

「ここには、男同士の一夜だけの体の結びつきを求めてくる人間や、恋人を求めて来る人間が多いからだよ。秀人がひとりで来たらあっという間に誰かにさらわれてしまうから」
秀人は兼介から聞かされるショッキングな事実に、キスされた事など忘れてしまっているようだった。

考えてみればこの堀内兼介という男は経営者としてはサラブレッドであった。
弟の隆弘と違い早くから経営学を叩き込まれ、アメリカに留学もしている。
「おい、仙波帰るよ車を呼んでくれ」
バーテンにそう声を掛けると秀人の手を優しく包んだ。
「秀人、さっき言った事はゆっくりでいいから考えておいて」
念を押すように兼介がそう言った。
「兼にぃ・・僕」
何か言おうとする秀人を遮るようにバーテンの仙波が「直ぐに車来ますので」と口を挟んだ。

「またいらして下さい。私がいるから大丈夫でしょう?」
仙波はそう言って兼介に同意を得るように見上げた。
「駄目だ」その提案は即効否定され仙波は苦笑いを秀人に向けた。
「あの、今日はご馳走様でした」
秀人は仙波と兼介に向かって頭を下げた。

帰りの車の中兼介に手を繋がれ、秀人はさっきの出来事を思い出した。
「さっきは・・・イヤだった?」
それは当然バーでのキスを指しているのだと鈍い秀人にも判った。
秀人は兼介に手を繋がれたり、キスをされたりしたのを嫌だと思わなかった自分を不思議に思った。
「イヤとかじゃないけど・・・でも」
でもいいとも思わないなどとは言えないでいた。

兼介は隆弘と仲良くなって直ぐに紹介され、それ以来ずっと兄のように慕ってきた。
今更そいう事の対象には見れるはずもないし、男が対象だと考えた事もなかった。
「イヤじゃないか・・・今はそれだけで良しとするか」
兼介の笑顔に秀人もこれ以上は今はいいと思って口を噤んだ。


秀人は自分の部屋のベッドに腰掛け1枚のメモをずっと見ていた。
あれから毎晩寝る前にその電話番号を見ていた、もう番号など記憶してしまっている。
何度も電話しようと考えたが、勇気がない。
そして何より理由が無かった。
勇気よりも理由よりも・・・怖かった。

今夜触れた兼介の唇よりも、一瞬触れた指先の方が心に響いた。

『もう一度・・・あと一度だけ会ってみよう』秀人はそう決心した。

じっくり言葉を選んだつもりだったが、送信したメールには「会いたい」としか打たれていなかった。
じっと握り締めた携帯が振動したのは、送信してから30分ほど経ってからの事だった。
そこには明日部屋に来てくれないか?という文字と時間だけが書かれていた。
秀人も「判りました」と簡単なメールを返した。

送信が終わって手を見るとびっしょりと汗を掻いている事に自分で驚いた。
「どんだけ緊張してるんだろう?」
時間が経ちその緊張が解れてくると何故か嬉しさが湧いてきた。
先日まで何故か怯える気持ちの方が強かったのに、どうして嬉しいのか判らなかった。

心の中のもやもやが消えたわけでは無いが、それ以外の何かが芽生えているのだ。
もうひとりの自分が会いたいと願っているようだ・・・そう思った時に蓮の言葉を思い出した。
『もしかして、秀人君の中にもうひとりの自分がいたりしない?』
少しその言葉の意味が判ったような気がした。
もしかしてこういう気持ち?

うとうとしかけた時に枕の横に置いていた携帯が再び振動し始めた。
携帯の着信画面を見ながら「あっ」と小さな声が漏れた。
「もしもし・・・ごめん忘れてた」
秀人は通話ボタンを押すなりそう言って謝った。
「秀人~こっちは心配してずっと待ってたのに・・」
「だって兼にぃが帰ってくれば判るのに」
同じ家に住む兄弟が帰宅すれば秀人だってもう帰ってる訳なんだから、と暗に言うが
「俺は秀人から聞きたいんだ」などと秀人には理解出来ない事を言っている。

「本当にごめんって・・」
「兄貴と何かあった?」秀人が電話しなかった理由をそう受け取っているらしい。
「別に・・何も無い」
「本当に?」
「何も無いよ」まさかキスされ好きだと言われたとは隆弘には言えなかった。
秀人は隆弘が自分と兄を結びつけようとしているのか、そうでないのかが判らなかった。

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COMMENT - 6

けいったん  2011, 02. 21 [Mon] 14:11

兼兄上様も策士で御座いますぅ

兼兄の先制攻撃!.∵・(・0・*;((❤=(❤=(❤=(゚ロ゚ c=アチャチャ-!!

蓮って 秀人が 思い出すまで じっと待ってるだけでは ダァー(゚ω゚)bメッ!!
明日で どうにかなるのか、どうにかするのか!?

『紅蓮会』も 復活して 応援しなくちゃ~
フレーフレーファイト━━(ノ゚д゚)人(゚Д゚ )ノ━━!!...byebye☆

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ちこ  2011, 02. 21 [Mon] 17:31

上様~っ(*^□^*)
前世は忘れてこの際、上様でいっとく?
きゃーーーーっ!投石禁止~~ε=┏( ・_・)┛逃げろっ!
だって、レンさん「動かざること山の如し」なんだもん(笑)
秀人くんが思い出すまで待ってるのかな~でも、秀人くんの方からリアクションしましたからねえ(^^)v

初々しい秀人くんにメロメロの上様(*^□^*)
そんな上様が不思議でたまらない秀人くん
秀人くんを出来すぎ兄貴に奪われるかもと心配な隆弘くん
微妙なこの状況、最初にぶち破るのは誰?
気になる~(≧▼≦)

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NK  2011, 02. 21 [Mon] 19:17

追い上げるのか

けいったんさまの兄"上様"という呼び方に反応してしまいました。(拍手)
蓮さん、兼兄上様、隆弘くん
予想では蓮さんが当然一番人気なのですね。
私もちこさまのように大穴狙いをしたいかな。
(紅蓮会からの投石覚悟)
このレース、兼兄上様が一歩リードしたようですが、明日蓮さんが追い抜きに
かかるのかなぁ。

Edit | Reply | 

kikyou  2011, 02. 22 [Tue] 00:30

けいったんさま  兼兄上様も策士で御座いますぅ

こんばんは.∵・(・0・*;((❤=(❤=(❤=(゚ロ゚ c=アチャチャ-!!
可愛い!顔文字

兼にぃじわじわと攻めて来ています。
隆弘も兄の出方を窺っている模様。

あとは蓮が動くだけですね。
記憶があるだけにウカツに秀人を攻められない蓮の動きがどうなるか・・って所ですね。

少し動きましたよ^^
まだ少しです、一気に行こうかな?
迷っている蓮を応援して下さいネ。

コメントありがとうございました(*^_^*)


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kikyou  2011, 02. 22 [Tue] 00:34

ちこさま

こんばんは(*^□^*)中が□の顔文字初めてだぁ^^

山の如し・・・・蓮は本来「火」なんですがねぇ・・・
少し刺激を与えてみましょうか?(笑)

兼介も隆弘もまだ余裕をかましてるみたいですねぇ。
蓮の事を訝しく想いつつも、まだゆっくりとした動きです。

これからどんな展開になるのか?
まだ私も判らないです^^;

秀人の感じるがまま動くつもりなんですが・・・
何せまだまだお子様的な所があるので^^;

今後の動きに注目してくださいネ。

コメントありがとうございました(#^.^#)

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kikyou  2011, 02. 22 [Tue] 00:39

NKさま  追い上げるのか

こんばんは。

3人三つ巴の戦いになるのか?
それとも?
怪しいバーテンも出てきてしまいました。

蓮が少し動いて・・というよりも、秀人が動いた?

今夜何か進展してしまうのか?
私も悩む所です(笑)

普段の話はあまり登場人物が多くないのですが、
この関係は多くなってしまいます。
どこかに違う大穴がいたりして(笑)

楽しく待ってて下されば嬉しいです^^
コメントありがとうございました(*^_^*)

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